
湧いてくる不安
「私が今、心の底から受け取りたいものとは?」
ノートに問いを書き出したが、答えがはっきりと浮かぶわけではない。「受け取る」ことの大切さは理解できた。なのに、なぜか心の奥底に違和感がある。毎回分かったつもりな私が恥ずかしくなる。
もしや私は、ただ単に受け取ることへの抵抗感だけではなく、——私は何のために生きているのか?——に、まだ正面から向き合っていないのかもしれない。
もし今の生き方がまちがっていたら?
人生を振り返っても何もない、全くの無価値だったらどうしよう?
やりたいことがないと気づいたら、どうすればいいの?
まさに混乱だ。ものすごく嫌な不安が湧いてくる。頭がぐるぐるして、胸のあたりが締めつけられるようだ。どうしても考えたくないのに、問いが頭から離れない。できるものなら、早く逃げ出したい。このまま何も知らないほうが幸せなのでは?
真紀子ちゃんとの対面
いろんな気持ちが湧いてくるが、龍先生の誘導に従い、静かに目を閉じた。
「深く息を吸って・・・ゆっくりと吐いて・・・。幼少期の真紀子ちゃんへ会いに行ってみましょう。どれくらいの背丈ですか?どんな表情をしていますか?」
私は呼吸を整えながら、心の奥の真紀子ちゃんに意識を向けていく。
「真紀子ちゃん、うつむいています。無表情です。このくらいの背丈・・・、小1くらいですね」
「そうですか。真紀子ちゃん、どうしてあげたいですか?」
「何かに止められている気がします。言葉が全く浮かんできません。真紀子ちゃんに、何も言えません」
「ほぉ、なぜだと思いますか?」
「・・・幼い頃から体が弱くて、体育ではよく休んでいました。弟が元気溌剌としていて、羨ましかったです。『なぜこんなに病弱なの?』と親に文句言っていたのを覚えています。疲れ果ててあきらめちゃっている感が・・・」
「なるほど・・・。大人になった真紀子さんは、どう感じていますか?」
過去と向き合う勇気
「幼稚園当時は、体育の授業等の明確な拘束があったわけではありません。病弱だとかの問題を抱えつつも、なんとか皆に合わせていました。小学校に入ってからは知り合いも他クラスになって、1人ぼっちになった気持ちになりました。」
「では、1番に引っかかる気持ちは、孤独感でしょうか?」
「1番かどうかは分かりませんが、かなり大きいです。私だけ休まされ、仲間外れにされた感覚を抱いていました」
「孤独感は、私も長期にわたって悩み苦しんできました。確かにキツイですよね。真紀子ちゃん、真紀子さん視点ではどう生きてほしいでしょう?」
「まず、抱きしめてあげたいです。」
「いいですね。どうぞギュッとしてあげてください。いかがでしょう?」
「・・・温かいです。でも、まだ不安そうな顔をしています。」
「真紀子ちゃん、何か言いたいことはありますか?」
「・・・私、どうせみんなと同じようにできないもん」
その言葉を聞いた瞬間、胸が締め付けられた。
問いの深掘り
龍先生の声が、私を現実へと戻す。
「真紀子ちゃんはよく分かっていないかもしれませんが、私の中で何かが変わったように感じます。」私は、ノートに静かにペンを走らせた。
『私が本当に求めているものは何か?』
『私は、何のために生きているのか?』
『この人生で、私は何を成し遂げたいのか?』
——私は、まだ答えを知らない。だが、問いを持つこと自体が、人生を深く考えるきっかけになる。
龍先生が微笑む。
「真紀子さん、その問いを持ち続けてください。答えはすぐには見つからなくても、その問いが人生を豊かにします。 問い続けることこそが、真紀子さんの人生を導くものになります。
私の潜在意識セッションの方針は、ご本人でできない点を補うだけに留めたく考えています。極力、真紀子さんが自力で開拓してみて達成感を持って欲しいんですが、いかがでしょう?」
深くうなづいた。
「ありがとうございます。はい。やってみます!」
この感覚を忘れないうちに、ノートを閉じた。私の人生は、今、新たな問いとともに動き出す。