空白の地平〜堺歩美さん物語21

言葉にならない領分

朝、目が覚めたベッドの上。窓から差し込む光が、以前よりも鮮明に、粒立って見える。椅子に座り、ただ呼吸を繰り返す。肺の奥まで空気が沁み入り、背中が内側から広がる感覚。丹田に気力がみなぎっているのが分かる。

「ビジョンが曖昧だ」 昨夜感じたその戸惑いは、今朝、満たされた納得感。これまでの私は、未来を「作る」ことに必死だった。足りないものを埋めるために、必死に計画を立て、正解を、目標を、私の外側に求めていた。

今は、その「足りない」という感覚が消えている。満たされているから、追いかける必要がない。今の私の中にあるのは、広大な「空白」だ。それは、何も無いことの不安ではなく、何でも描き込める、あるいは何も描かなくても成立する、圧倒的な自由の感触。

滲み出す輪郭

飯田橋のオフィス。デスクと向き合っていても、すぐにPCを開く気にならない。かつてなら、1分1秒を惜しんでメールを処理し、周囲に「仕事をしている私」を見せつけていただろう。ふと、これからの仕事のあり方について考えている。

「自立具現化コーリング」 インタビューで美奈さんから聞いたキーワード。同じようにたどってみたからこそ、今の体感と重なり始めている。これから向き合うのは、誰かが作った正解をなぞることではない。

私という存在から、何が滲み出ようとしているのか?それを、整えずに、そのまま世界へ映し出すこと。龍先生のサポートを経て、1人では決してたどり着けなかった「心身の解放」という土台の上に、新たな私の輪郭が着実に結ばれようとしている。

「編集長、少しお時間いいですか?」 昨日のスタッフが、また声をかけてきた。 彼の顔にはまだ迷いがありつつも、以前のような私への依存はない。

私は、椅子から立ち上がろうとして、止めた。座ったまま、ただ、彼を視野に入れる。

「ええ、いいわよ。話して。長くなるなら場を変えようか?」 私自身も聞いたことがないほど深く穏やかな声に驚く。美奈さんが言っていたように、変化した私のエネルギーが、周囲へも浸透する相乗効果。実際に起きているのかもしれない。

始まりの予感

帰り道。飯田橋の駅へと続く坂道を下る。夕暮れの外堀通り。行き交う人々の足音、家路を急ぐ車の列、お堀の底から響いてくる中央線の重低音。そのすべてが、私を通り抜けていく。

空白の地平〜堺歩美さん物語21

帰りの電車に揺られながら、ふと気づく。私はもう、「誰か」になろうとはしていない。今の私にできることを、不格好なままでも差し出す。それだけでいいのだという、強く静寂な確信。

マンションに着き、玄関のドアを開ける。部屋の明かりをつける前に、暗闇の中に立ってみる。不安はない。ここにあるのは、1人ではたどり着けなかった、新たな私と世界との「間」。 明日、何が起きるかは分からない。分からないまま、この自由な空白へ飛び込んでいく。「・・・さあ、いこう」 湧き出てくる自分自身を突き動かすような声。それは、ようやく始まった、本当の意味での私の人生の産声。

心身の解放〜堺歩美さん物語20

何もしない

朝の吉祥寺駅。中央線がホームへ。人の流れに紛れながら、ふと気づく。急いでいないのに、足が止まらない。整えようとしなくても、そのまま動いている。呼吸が楽で、深く吸えている。足どりがものすごく軽い。

車内。いつもなら、頭の中で今日の段取りをなぞっていたのに、何もしていない。窓に映る自分をぼんやり見ている。つい1ヶ月ほど前までは、通勤中の化粧だった。「何をするか」「誰と会うか」を考え、ファンデーションの厚みやルージュの色を調整していた。何もしないことが、妙に心地よい。

飯田橋で降り、会社へ。歩幅を合わせようとも、速めようともしていないのに、流れから外れていない。どこにも力を入れていないのに、崩れていない。

「それでいこう」

「おはよう」オフィスに入る。

「編集長、例の件ですが・・・」スタッフが資料を差し出す。受け取り目を通す。すぐに言葉が出てこない。けれど、そのまま黙っている。

「それで、どう進めるつもり?」とっさに出た言葉に、間が空く。予想外だったのか、驚いた表情でこちらを見る。そんなに驚かれるような私だったのか?彼自身の言葉で語り始める。途中で口を挟む気にならない。最後まで聴いて、うなずく。

「それでいこう」以上。心なしか嬉しそうなスタッフ。私も嬉しくなる。

沈黙という「間」

午後、作家との打ち合わせ。言葉を探している沈黙。以前なら、何か言って埋めていた。
今日は、沈黙という「間」が心地よい。軽くコーヒーを一口。コーヒーポットからお互いのカップに注ぎ足し、そのまま待つ。

心身の解放〜堺歩美さん物語20

「堺さん。・・・今の感じ、なんかいいですね」作家がぽつりと言う。理由は訊かず、軽く微笑みうなずく。安らぎを分かち合えている充実感。そうだ、私が求めていたのはこういう感覚だ。

安らぎに満ちている

帰り道。中央線の満員電車の中吊り革につかまり、達成感とともに1日を振り返る。前に美奈さんが言っていた「求めてきたマリアージュ」の意味を噛みしめている。当時は何を言っているのか、雲をつかむような感覚だった。変わろうと努力した感覚は皆無だ。気づいたらいつの間にか、切り替わっている。

吉祥寺で降り、改札を抜け、家路へ。夜の商店街を抜け、雑踏の空気が穏やかに入ってくる。エレベーターを上がり、ドアを開ける。部屋の中の安らぎに、思わずアツい何かが込み上げてくる。またこうして家に帰って来れたことがありがたい。

リビングの灯りをつけ、イスに座わる。明確なビフォーアフターの違いに、驚きとともにビジョンの曖昧さに戸惑いが湧いてくる。

あり得なかったはずの会話〜堺歩美さん物語19

ゆでたまごのように

家に戻り、明かりをつける。いつもと同じ部屋のはずなのに、何かが違う。洗いざらい模様替えをしたい気分。

今日1日を思い返す。何かを頑張ったわけじゃない。特別なことを成し遂げた実感もない。それでも、はっきりしていることが1つだけある。

一度も「確認」をしていない。正しいかどうかも、誰かにどう思われるかも、この選択でいいのかも。何かに照らし合わせることなく、そのまま決めて、そのまま動いていた。なのに、不思議とズレていない。むしろ、これまでよりも静かに、1つひとつが噛み合っている。

——ああ、そういうことか。何を選ぶかじゃない。「どこから選んでいたか?」だったのだ。これまで私は、選び決める前に、どこかへ預けていた。確かめて、照らして、間違えないように。

でも今日は違った。肚(ハラ)で決めていた。最初から、私だった。胸の奥にずっとあった場所から、そのまま選び決めていた。たったそれだけのことなのに、1日が、まるごと変わっている。

「記念日」とも言えそうだが、名前をつけるほどのものじゃない。しかしもう戻らない気がする。タマゴからゆでたまごのように。

私は、もう——自分の枠外で選ぶことはない。「今の私に何ができるのか?」その問いだけは、外さずにいられる気がしている。

あり得なかったはずの会話

あり得なかったはずの会話〜堺歩美さん物語19

直美との夕食で、重い沈黙のあと、直美が口を開く。「別れたんだよね・・・」

「そう」さらに重い沈黙。直美の言葉を待つ。

「・・・・・なんかさ」

改めて姿勢を正す。

「・・・終わったはずなのに、全然終わってなくて」

間が空く。

「頭では分かってるのに、何をやってもどうにも収まらなくて」

視線が落ちる。「・・・どうしたらいいか、・・・分かんなくなって」

途切れ途切れの言葉。前なら、ここで埋めていた。正しく受け止めようとしていた。でも今は違う。待つ。急かさない。

「・・・だから、やった」。

「やった?あぁ、万引きのことね。」

「そう。もうどうでもよくなっちゃった、・・・っていうか」

言葉を探すように、視線が揺れる。涙が滲んできた。

「どうでもよくしないと、無理だった・・・・・・・・」

「・・・何はともあれ、話してくれてありがとう。つらかったわね」

「うん。・・・だけどもういいの。なんかふっきれたわ。・・・学校からの冷たい視線はあるけど、やり抜いてみるわ。」

「よかったわ。直美、生まれ変わったみたいね。今までと全然違うわよ」

「ママの方こそだよ。今までじゃ、こうやって話すなんてあり得なかったから」

コーヒーを淹れ直し、時間を忘れるほどの語らいとなった。

生まれ変わる背中〜堺歩美さん物語18

鏡に映る顔

昨夜、龍先生の継続セッション。言葉にできなかった感情が理解できるようになってきた。何より驚いたのが、無性に怯えていた原因が腎臓や肺にあったという事実。「ちゃんとやらなければ」という衝動が湧き出ていた経路をたどり、気にならない状態へ導いていただけたのは圧巻だ。施術家としての経験からの見識だというが、怪しがっていたことが恥ずかしくなる。

一夜明けて、何かが切り替わった感覚はあった。はっきり説明できないが、今までと同じでないことだけは分かる。朝の目覚めで、昨日と同じ天井を見上げた瞬間、いつもなら先に動き出していたものが穏やかなままだ。

起き上がる前に1日が組み上がっていく感覚。「どこでズレるか?」「どう立て直すか?」「どこを先に潰すか?」が来ない。今まで、顔を洗う時に見たことがなかった鏡に映る私の顔。化粧は駅に着いてホームか電車の中だったが、今した方がいい気持ちになる。

キッチンに立ち、コーヒーを淹れる。いつもなら、もう仕事の修正が始まっていた。まだ起きてもいないことを、幾重にもシュミレートしていた。龍先生が言う通り、「ちゃんとやらなければ」という防衛反応からくる動機でやってきていたのだ。それが全く湧かないまま、朝が進んでいく。

深み

外に出て、通勤のいつもの道。人の流れに合わせながら、前なら自然にやっていた細かい調整に気づく。ぶつからない位置、歩く速さ、わずかなズレを埋める動き。今は、その必要を感じない。昨日までの違いに気づいて、そのまま通り過ぎる。

生まれ変わる背中〜堺歩美さん物語18

会社に着きデスクに座り、メールを開く。並んでいる内容を1通ずつ確認中の、深呼吸してみての気づき。深みが違う。「自信がない・息が浅い・猫背はセット」と言われていたのがよみがえる。画面上の私しか分からないのに、すべて見抜かれていたのか?確かにイスの座り心地も、湧き上がる感覚も・・・。

1通、返信を書く。整えないわけではない。適正化させ、そのまま送る。しばらくして「了解です」と返ってくる。今まで「言葉を選び整えて、結局出さない」を繰り返してきた。今の私には、余剰な熟考は不要なのだ。「やはり!」「よし!」という気持ち。

止まっている

昼。いつもなら次の段取りを詰めている時間。頭の中を探るが、同じようには動かない。代わりに、はっきりしていることがある。「前は、止まれなかった。『止まれば崩れる』と思っていた」。今は「止まっている」。しかし何も崩れていない。

仕事を終え、帰り道を歩く。朝と同じ道なのに、疲れ方が全く違う。背筋が立っている。呼吸が深い。かつ、見守られているかのような、包み込まれている安心感。これが美奈さんが言っていた「求めてきたマリアージュ」なのだろうか?

家に着き、ドアを開ける。同じ場所。同じ空間。だからと言って、前と同じ私に戻る理由が、見当たらない。私は、確かに生まれ変われている。静かに1日が終わる。

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#キッチン
#コーヒー
#感情

響き合う世界〜堺歩美さん物語17

響き合う世界〜堺歩美さん物語17

言葉が体に浸透

朝。目覚まし時計の音が鳴る前に目が覚めた。というより、現実へ戻ってきた感覚だ。

静寂だ。昨日溢れて止まらなかった「ありがとう」と「ごめんね」。消えたわけじゃないが、言葉が体に浸透し1つにまとまった何かがある。

うまく言えない。しかしだからこそ、前と同じ自分には戻れない、戻りたくないのが分かる。起き上がるが、体が重い。昨日の濃密な集中力もあって、ドッと疲れている。

カーテンを開ける。光が射し込む。前と同じ朝なのに、同じ感じがしない。とはいえ「違う」と言い切れるほどの変化でもない。その曖昧さに戸惑う。

キッチンに立つ。コーヒーを淹れる。お湯を注ぐ。動きが、やけに遅く感じる。遅くしているわけじゃない。急ぐ必要がない気がしている。——いや、実際は分からない。急いだ方がいいのかもしれない。分かるが、体がもうそれを選ばない。

不安になる。こんなことでいいのか?こんなふうに動いて、間に合うのか?答えが出ないまま、コーヒーを飲む。

スマートフォンを手に取る。声をかければ済む距離にいるのに、直美からのメッセージ。息が止まる。前と同じ反応。胸の奥が、固くなる。・・・そのまま開く。短い文。意味を考えようとした瞬間、ハッとする。また「正しく読もう」としている。完全にやめきれたわけじゃない。それでも、進める。

返信を打つ。言葉が詰まる。それでも消さない。整えようとして、途中で手が止まる。そのまま、整えず送る。

送ってしまってから、「——あ」。もっといい表現があったかもしれない。もっとちゃんとできたかもしれない。でも、もう戻せない。「・・・それでもいい」と思っている私がいる。妙に割り切れていることが、なんだか怖い。

外に出る。人が多い。いつもの道。少しぶつかりそうになる。前なら、無意識に身構えていた。今も、完全には消えていない。我ながら驚く。足が軽い。

会社に着く。メールが並んでいる。最近着手できなかった箇所もあり、視界が鮮明に映っている。大きく深呼吸し今日の流れをイメージすると、思考が巡る。どう処理するか?どう優先順位をつけるか?どう整えるか?——全部、前と同じことをやろうとしている。強烈な違和感。昨日までは当たり前だったのに・・・。

「・・・いいか」小さく呟く。何が「いい」のかは分からないまま、1通目を開き、書く。途中で引っかかるが、止めない。少し雑なまま、送る。数秒後、返信。

「了解です」それだけ。それだけなのに、なんとなく胸の奥が緩む。

響き合う世界

昼。直美から、またメッセージ。今度はすぐに開けた。怖くないわけじゃない。でも、さっきよりはスムーズ。短いやりとり。途中で、言葉に詰まる。送るか迷うが、そのまま送る「直美のこと、聴かせて」。

既読。少し時間が空く。その時間が、やけに長く感じる。心がざわつき揺れる。

返信。「なら話せる」それだけ。その一文で、何かがほどける。安心とは少し違うが、確かに前とは違う場所にいる。

夕方。仕事はまもなく終わるが、前ほど重くない。見守られているかのような温もり。ちゃんと疲れている。その疲れを隠そうとしない私がいる。それもまだ慣れない。

家に着きドアを開けたら、直美と目が合う。言うべきか、待つべきか、迷う。分からない。ながらも「・・・昼のメールのことだけど」口が動く。

途中で何度も詰まる。うまく言えない。それでも、やめない。整わないまま、言葉が出ていく。自分でも聞いていられないくらい、不格好な声。でも、止められない。

直美は、黙って聞いている。長い沈黙。逃げたくなる。それでも、その場にいる。何を語っているのか、自分ながらによく分からない。いったい何が起きているのか?

「・・・それでいい」小さく、返ってくる。その一言で、力が抜ける。直美の表情が和らぎ、直美が生まれて初めてなくらいに、語り合った。今、初めて直美と響き合えている。

何が起きたのかは、分からない。何も解決していないかもしれない。それでも、確かに私の中で何かが変わっている。

部屋に戻る。静かだが、昨日とは違う静けさ。もう前と同じやり方には戻れない。それだけは、はっきりしている。理由は、まだ分からない。分からないまま、今日が終わる。

#ありがとう
#世界
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#キッチン
#龍
#生き方

あまりに矛盾がない〜堺歩美さん物語16

あまりに矛盾がない〜堺歩美さん物語16

「終わった」

「自立具現化コーリング」4時間が終わった。4時間は長いと思ったが、「え?もう終わり!?」といった感覚。

1つ、はっきりしている。「・・・終わった」口に出した途端の違和感。何が終わったのか分からない。が、「終わった」が最も近い。

画面の向こうは変わらない。部屋も何もかも同じ。表面的には全く同じなのに、さっきまでと明らかに違う。軽い、とは違う。スッキリした、でもない。心の奥深くから湧き出てくる「ありがとう」と「ごめんね」。

戻れない

「・・・ああ」ほのかに息が漏れる。確める。前みたいに整えようとする。言葉を選ぼうとする。思い浮かんでくる相手に合わせようとする。

・・・できる。やろうと思えば。しかし瞬時に分かる。違う。ものすごく不自然だ。続けきれない。戻れない。「・・・・・・」言葉が出て来ない。

止まる。「・・・これ・・・」言葉が浮かんで、止まる。例えようがない。言葉にした瞬間、違うものになる気がする。残っている。今までと違うが、確実に今がいい。いくらお金を積まれようが、昨日の私には戻りたくない。

一致している

・・・あまりに矛盾がない。編集者としての客観視欲が湧きそうだが、浮かんだ瞬間、やめる。必要がない。すべてが一致している。ムリに整えようとしたら逆効果だ。

用件を終え、画面が切れる。静かな部屋に戻る。何も変わっていない空間。立っている位置が違う。こみ上げてくる「ありがとう」と「ごめんね」。

スマートフォンに手を伸ばす。メッセージを開くと、途中までの下書きがある。指が動く。止めない。整えず打つ。送った後、確認しようとして——やめる。必要がない。

「・・・ああ」また、ほのかに息が漏れる。不安がないわけじゃない。怖さはあるとはいえ、崩れない。矛盾があまりにない。立ち尽くしている。「ありがとう」と「ごめんね」が止まらない。

#幸せ
#ありがとう
#瞑想
#龍

飛び込むしかない〜堺歩美さん物語15

飛び込むしかない〜堺歩美さん物語15

止めてきた「ちゃんと」

「ディープマインドセラピー」の直後。言葉が出ない。画面は変わらない。部屋も同じ。何も起きていないはずなのに、さっきまでとは明らかに違う。前のお試しの時とは、質が違う。軽くなった、というより——逃げ場がなくなった。

「・・・ああ」思わず声が漏れる。

「理解した」というより「感じてしまった」に近い。今までぼんやり流れてきたもの。言葉にしようとしても、どこかで逃がしてきたもの。それが、逃げられない形で目の前にある。

「このままでは無理だ」ずっと使ってきた言葉。その中身が、初めてはっきりする。
無理なのは、状況じゃない。環境でもない。能力でもない。私自身のやり方だ。

整えてから話す。正しく伝えようとする。相手に合わせる。波風を立てないようにする。結果、何も出さない。止める。飲み込む。分かっているように見せる。全部つながっていく。

家庭でも、仕事でも、さっきのやり取りでも。同じようにせき止めてきた。だから同じ結果。「・・・これか」逃げていたわけじゃない。確かに、ちゃんとやろうとしてきた。その「ちゃんと」が、全部止めていた。気づいた瞬間、軽くなるどころか、重くなる。

「やり方」から「あり方」へ

これが原因なら、今までの全部がつながり、矛盾や曖昧という靄が晴れた。同時に、「やり方」をいくら変えようとも無意味だと分かった。「あり方」を変えない限り、何をやってもダメだと分かる。もうごまかせない。

今までは、「分からない」で止まれた。「仕方ない」で済ませられた。しかしもう違う。分かってしまった以上、同じやり方を続ける理由が絶たれた。

恐怖が湧き出てくる。じゃあ、どうする?整えずに話す?そのまま出す?果たしてそんなことができるのか?今までやってこなかったやり方だ。失敗する。壊れるだろう。壊れたら立て直せない。元に戻れる選択が、もう現実的に見出せない。

画面の向こうで、龍先生は何も急かさない。ただこちらを見ている。その視線の中で、私の状態がそのまま浮き上がる。「どうされますか?」穏やかに問われる。

不格好な決意で未踏の地へ

分からない、と言いかけて止まる。さっきまでなら、それで終われた。でも今は違う。現状では、確実に私にはどうにもできない。分からないままでも、選ばなければいけない。息を吐く。

「・・・やります」口に出した瞬間、逃げ道が消える。

自立具現化コーリング。美奈さんから名前だけは聞いていた。内容も、正確には分かっていない。それでも、今の流れの延長線上にあることだけは分かる。「このままのやり方ではダメだ」と分かってしまった以上、前に進むしかない。

「理解してからやる」ではない。「納得してからやる」でもない。とはいえ、このままでは終われない。

「お願いします」言い切る。怖さは消えていない。不安もある。それでも、さっきまでとは違う。迷いながら進むのではなく、分からないまま飛び込むしかない。

画面は変わらない。部屋も同じ。それでも、もう同じ場所にはいない。

#仕事
#幸せ
#人生
#セッション
#失敗
#自立

「なぜ減反?」違和感の奥にある解放

「なぜ減反?」違和感の奥にある解放

先日、たまたま流れてきたニュース記事を見て、目を疑いました。「高市内閣、減反政策」?米の価格が信じられないほど高騰している状況にも関わらず、なぜ減反?石破政権では増やしていく方針を固めたのになぜ、減らすのでしょうか?

違和感を抱きつつも、誰も止めません。私も含め、「なんとなくそういうもの」と流してしまっているような・・・。こういったこと、他にもありませんか?

「共生共栄共和思想」という価値観を打ち立て、世に広げようとしています。名前が長いので、「響立思想」と短縮化を試みました。米の問題を通じて、あなたと対話する気持ちでこちらを書いています。

響立思想が、世にあなたにどんな影響を及ぼすのか、私自身も試行錯誤中です。暗闇の中で鍵を探している感覚。ぜひあなたのご意見聴かせていただけませんか?

私は今まで、国が強制的に管理統制をしているものと考えていました。農家の現状は、国に完全に強要されているわけではないようです。政策や補助金・流通の仕組みによって、結果として強く誘導されているのだと理解しました。

作りすぎれば価格は下がります。価格が下がれば経営は成り立ちません。だからこそ「需要に応じた生産」が求められます。さらに補助金には条件があり、特定の作物への転換も促されてきたようです。

命令ではありません。しかし従わざるを得ない暗黙の了解に準じた構造があるのではないでしょうか?だからこそ現場感覚では、「決められている」に近いでしょうし、私もそう思い込んできました。

この現実を無視して、「覆せ」と言っても意味はありません。対立が強まるだけで、本質は何も動きません。

解放とは

ぜひあなたと共有したいのが、「解決」ではなく「解放」という発想。解放とは何でしょうか?こちらでは「『従う or 反る』から抜け、自ら選べる状態」と定義づけています。

環境を変えることでも、ルールを壊すことでもありません。そもそも管理統制されることが、本当に必要なのでしょうか?すべてにおいて常に従わなければならないもの?例えばもし「どうぞ好きにしてください」と言えるなら、どのようないいことが起きそうでしょうか?

多くの場合、同じ枠内で選ばざるを得ません。「従う or 逆らう?」「安定 or 自由?」。この枠にいる限り、どちらを選ぼうが本質的に縛られます。解放は、この選択肢を無効化させます。なぜなら、次元を上げたり、前提を改めるから。

例えばどうすればいいのでしょう?3要素「許可」「決定」「一致」に分かれます。

許可

多くの皆さんが知らずのうちにやらかしているのが「禁止令」です。幼少期に言われたこと、ありませんか?「◯◯◯やっちゃダメでしょ!」等、私も含め大人になった今も、そのまま継続させている方かなりいらっしゃいます。

「許可」とは、心理的な解放です。「やってもいいけど、やらなくてもいい。どうぞお好きなように」です。すべての基盤でもあり、許可できていなければ何をやってもうまくいきません。

決定

「決定」は構造的な解放です。許可を出せ、方向性が定まった状態。決める上で、必要不可欠なキーワードが「捨てる」。分かりやすく、AかBの選択肢があるとしましょう。Aに決めたなら、Bはもともとなかった状態です。

一致

中途半端な状態だと、問題が起きがちです。「許可したのに決めない」「決めたのに許可していない」というズレ。よって最終的に「許可=決定」になる状態、一致です。

「やっていいと思った瞬間、もう選んでいる」「選んだ瞬間、迷いがない」という状態を作り出せるかどうか?は、大きな分かれ道となりそうですが、あなたにはどのように映っていますか?

自立

すべてを変える必要はありません。規模は小さい方がオススメ。突然の変化は反発が起きますし、長続きしない典型例です。

例えば、

・一部の作物だけでも自分で販売してみる。
・一部だけでも別の販路を持ってみる。
・自分の価格で売る経験をしてみる。

重要なのは、「自分で決めて、自分で結果を受け取る」こと。この回路が1つでも通った瞬間、もう「言いなり」ではなくなります。

従うことも、外れることもできる、どちらでも選べる状態。まさに「自立」と呼べるのでは?自立は、「自然や社会とのつながりから、自らを確立させること」と定義づけており、幸福への潤滑剤でもあります。

響立思想で言えば「解放とは、自立の回路を通すこと」。自立が生まれれば、一貫性が生まれます。一貫性があれば、信頼が生まれます。その先に、理想とする世界が現れます。

選べる領域

現実は確かに制約があります。とはいえ、その中でも選べる領域は0ではありません。解放とは、選べる領域を1つでも持つこと。その小さな積み重ねが、やがて選択の次元を変えていくのです。

ここまで読んで、あなたはどう感じますか?もし今、「私は選んでいない」と感じたなら、それは問題ではなく出発点かもしれません。1つだけでいいのです。あなたが今、
自分で決めていないと感じることは何でしょうか?

あなたなら、どうすれば自主性をもって選べますか?答えを曖昧にしたままで終わらせるのは、あまりにもったいないです。言語化した時点で、それはすでに動き始めていますよ。


・理想はあるのに現実が動かない
・自ら決めているつもりでも違和感がある
・どこがズレているのか分からない

もしそう感じているなら、1人で整えるのは難しい領域に入っています。私は、そのズレを言語化し、自立の回路を通すサポートをさせていただいています。どうぞ話を聴かせていただけませんか?

高市政権、コメ政策は先祖返り 増産一転、減反に 高値容認おこめ券は一時しのぎ

#幸せ
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#解放

分からないままの変化〜堺歩美さん物語14

分からないままの変化〜堺歩美さん物語14

分からないままの変化

「お試しセッション」というが、特別なことをされた覚えもない。たわいのない会話だったはずだ。なのに、明らかにさっきまでと違う。

しばらく動けない。画面はもう暗い。通話は切れている。なのに、まだ何かが続いている感覚が残っている。何が起きたのか、説明できない。

胸のあたりが軽い。詰まっていたものが抜けたような、でも何が抜けたのか分からない。整理しようとする。どこから変わったのか、何がきっかけだったのか、順番に辿ろうとする。・・・追えない。途中で途切れる。

「何だったの?今の」口に出してみる。答えが出ない。というか、分からないままの方がしっくりくる。全く理解できていないのに、ビフォーアフターの違いだけがはっきりしている。その状態が、妙に現実味を持っている。

疑えない

キツネに化かされたみたいだ。ふと浮かんだ言葉に、苦笑する「キツネ・・・」。私に限って、そんなはずはない。冷静に考えれば、ただのオンラインセッション。特別なことは何もない。理屈で説明できるはずだ。・・・できない。

おかしい。疑う材料はいくらでもある。疑う方が自然だ。なのに、その疑いが続かない。さっきまで強烈だったはずの「怪しい」という感覚が、暖簾に腕押し。確実にあるのに、どこか遠くにある。代わりに残っているのは、「もう一度確かめたい」という感覚。

信じているわけではない。納得もしていない。このまま終わらせるのは、あまりに不自然だ。スマートフォンを手に取る。さっきのやり取りがそのまま残っている。さっきの感覚が、まだ残っている。いったい何をされたのか、確かめずにはいられない。

メッセージを開く。何を書けばいいのか分からない。少し考えて、打つ。

「先ほどはありがとうございました。正直、何が起きたのかよく分かっていません」いったん止まる。消そうとする。整えようとする。・・・やめる。そのまま続ける。

「もう一度受けてみたいと思っています。特に『このままでは無理だ』と考えてしまっている理由を明確にしたいです」送る。

迷いのない送信

すぐには返ってこない。待つ。その間、また疑いが顔を出す。本当に大丈夫なのか?何をしているのか?冷静になれ。そう言い聞かせる声が浮かぶ。

もう1つの感覚が消えない。「このまま戻ったら、さっきと同じになる。」

しばらくして、返信。「分からないのが正常です。素晴らしいご決断ですね。直近のご都合はいかがでしょうか?」

余計な説明はない。その代わり、逃げ道もない。画面を見つめる。ここでまた止まる。選べる。やめてもいい。理由はいくらでもある。それでも、指が動く。

「お願いいたします」送信。

今度は迷いがない。送った後、ゆっくり息を吐く。まだ何も分かっていない。信じているわけでもない。それでも、確実に一歩進んでいる感覚だけがある。戻ろうと思えば戻れるはずなのに、なぜかその気が起きない。キツネに化かされたまま、進んでいる。

#幸せ
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#メッセージ
#龍
#ビフォーアフター

引けないまま決める〜堺歩美さん物語13

今回の話は、信用を一切なくしていた会社員当時にHPからお申し込みくださった、船橋にお住まいのC.H.さんのエネルギーを再現してみました。

お互いに何も分からない中、田端のカフェで会いました。結果、約半年間。一気に信頼関係ができ上がりました。

整えなくていい

送信してから、画面を閉じる。何かが終わったような、始まったような感覚だけが残る。

仕事が手につかない。目の前の資料を見ているのに、頭に入らない。時間だけが進んでいく。さっき送った一行が、何度もよみがえる。「うまく言えませんが、今のままでは無理だと感じています」あれでよかったのか分からない。むしろ、あれしか出せなかった。

夕方、スマートフォンが震える。画面を見ると、送った件の返信。息が止まる。短い文章。形式ばった感じはない。説明も多くない。が、こちらの言葉に触れている。「そのままで大丈夫です」また息が止まる。

何が大丈夫なのかは分からない。それでも、引っかかる。「うまく言えない状態のままでかまいません。無理に整えなくて大丈夫です」意図的に深呼吸。「整えなくていい」なんて、言われたことがない。

引けない

画面を見たまま、動けない。返信するか迷う。何を書けばいいのか分からない。また同じになる気がする。それでも、打つ。「ありがとうございます。正直、何をどう伝えればいいのか分かりません」送る。

すぐには返ってこない。待つ。その間、何度も考える。やはりアヤしい。都合のいいことを言われているだけではないか。それでも、さっきの一文が残る。整えなくていい。

夜、もう一度通知が来る。「今のままお話しいただければ十分です。一度お時間をとりましょうか?」直近の日程候補をいくつか送るよう書かれている。ここでまた止まる。会うのか?話すのか?画面を見つめる。逃げようと思えば逃げられる。理由はいくらでもある。なんとなく、指が動いてしまう。「オンラインでも可能ですか?」送信する。

すぐに返ってくる。「はい。ZOOMでも可能です」短い。日程を3つ送り、返信があった。確定。

終わったはずなのに、終わっていない感覚が残る。1つだけ、はっきりしている。もう、引けない。引かない。

引けないまま決める〜堺歩美さん物語13

信頼関係

ZOOM面談。画面の向こうの言葉を、なかなか理解できない。

「信頼関係が大事なんです」多くの場面で聞くような言葉のはずなのに、なぜか引っかかる。信頼関係——その意味を考えようとして、自分の中でまた止まる。

私は、この人を信頼しているのか?分からない。というか、疑っている。完全に理解できているわけでもないし、「怪しくないか?」という疑念も消えていない。それでも——なぜか、画面を閉じようとは思わない。

「体は、ご本人の本音に最も強く反応するんです」静かに続く言葉に、意識が引き寄せられる。

「表面的に信頼しているように見えても、内側で違っていれば、その通りの結果になります。」

内側で違っていれば——。その一言が、残る、刺さる。自分の中を探る。信じているふりなら、いくらでもできる。納得したように頷くことも、合わせることも、これまで何度もやってきた。でも今は違う。むしろ逆で、信じていない自分を、はっきり自覚している。見透かされている。

引かれる側

「もし怪しいと思われるなら、やめておいた方がいいです。」

サラッと言われたその一言で、空気が変わる。売り込まれるどころか、引かれている。——なぜか、離れられない。普通なら、ここで終わるはずだ。「やっぱり今回は見送ります」と言って、画面を閉じる。それが自然で、安全で、何もまちがっていない。そうすれば、何も失わない。

それでも——なぜ?その選択をしたくない。理由は、説明つかない。「なぜ?」が頭の中で飛び交い、混乱の渦中にいる。こんな時は、判断しない方がいい。今は決断を控えた方がいい。

同時に別の声もこだましてくる。「ここで離れたら、もう戻って来れない」その感覚が、消えない。どころか、増幅してくる。

決めたのは私

信頼しているわけではない。むしろ、不信の方が強い。それでも——その不信ごと、置いたまま。「・・・あの」声が、震える。

「遠隔で、お願いすることは・・・・・・できますか?」言ってしまった。

同時に、どこかで決まっていた気もする。画面の向こうで、龍先生が頷く。

「大丈夫ですよ。まずはお試しセッションでもよさそうですね。もし心の準備が整っておられるようなら、今すぐにでもできますがどうしましょう?」。

特別なことは何も言われていないのに、逃げ場がなくなったような感覚になる。決めたのは、向こうではない。私だ。目を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。もう一度、画面を見る。さっきと同じはずの景色が、かすかに違って見えた。

「はい。お願いいたします」

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