本当の言葉〜早乙女芽衣子さん物語8

問いの解像度

夜、久々にぐっすり眠れた。泣いたあと、心は静かで穏やかだ。感情が嵐のように吹き抜け、今は凪のよう。泣けたことで感情解放できた手応えがある。「健全な精神は、健康な体から」とよく言われるが、まさにそのとおりだと実感している。

朝5時。目が覚めて、しんと静まり返ったベッドの上で、天井を見つめながら考えている。

「私は・・・何を分かっていたのか?」

娘の名前――優花。名づけたのは私だ。でも、その名前に込めた意味を、自分の口からちゃんと語ったことがあっただろうか?誰かに訊かれて、答えたことはあるかもしれない。でも、あの子に向かってまっすぐに「あなたの名前はね」と話した記憶を、どうしても思い出せない。

穏やかな静けさが、なおのこと苦しい。答えがないからではない。問いの解像度が、水アカがついた磨りガラスのまま。意識はハッキリしているのに、「名前ってなに?」という問いの輪郭だけが、いつまでも胸の奥に残り続けている。まるで、娘が今も問いかけてくるように。

本当の言葉

ベランダに出てみた。空気は冷たく、晴れて澄み渡っている。頬を撫でる心地よい風に、ようやく深く呼吸できた気がする。

「私は、あの子に何を伝えたかったのだろう?」

ずっと「正しさ」に縛られて生きてきた。政治の世界で、たった1回の失言で命取りになる場面を何度も見てきた。だからこそ、いつしか言葉を選ぶ癖がつき、感情を飲み込むようになっていたのかもしれない。

本当の言葉〜早乙女芽衣子さん物語8

あの子は本当の言葉を求めていたのだ。取り繕わない、傷つこうが悩んでいようが、絶対に揺るがない魂からの言葉。分かっていなくても、分かろうとする姿勢。それを、ずっと見せられなかった。

いなくなった今、優花にかけてあげたい言葉を探すも、一向に出てこない。何を言ってもうわべだけの、納得には遠く及ばない気がしてならない。

再出発の教本

Kindle端末は、今もリビングのテーブルに置かれている。『自分の名前を愛する力』あの本は、もはや「読み終えた本」ではなくなっていた。

娘が残した問いを、私が今ようやく引き継いだという証。私にとって『自分の名前を愛する力』は、娘の遺書ではない。再出発の教本なのだ。

泣いたことも、痛んだことも、決して無駄にはしたくない。あの子の問いとともに、もう一度、人生を考え直していく。名前を、そして私自身を。

考えに考えてみて分かったことがある。いくら考えても、現状では優花への言葉を紡ぎ出すことは無理だ。龍先生に助けを求めてみてもいいのではないか?と考え至ってきた。

「龍 庵真 様

はじめまして。
先生の著書を読ませていただき、大変感動しております。
困っていることがあり、相談させていただけませんでしょうか?
よろしくお願いいたします。

早乙女 芽衣子」

メッセンジャーで送ってみた。この送信ボタンを押すのに、勇気を要した。私は今、問いを抱えたまま進もうとしている。あの子の問いに、今度こそ私なりの答えを生きていくために。

投稿者:

RyuAnshin

Universal Flow Therapy 健創庵 龍 庵真(りゅうあんしん)と申します。
 少なくも20万人超の名前と向き合わさせていただいた経緯から、Google検索より速く開設できます。 統命思想というオリジナル事業を立ち上げ、天命に生きる方を輩出するために今を生きています。 絶対に目標達成したい方へ、未知の可能性を実感の自立具現化サポート。 
 
 15才で自衛官となり、出身地の長崎よりも首都圏での生活が2/3となりました。 
 私自身のセルフイメージが強烈に低く、どんなに素晴らしいことをしても、悪い意味でバランスをとるような出来事が起きていました。 マジメに生きようともがきつつも、運命の荒波に翻弄され続けた期間は、30年を超えます。 
 今まで一貫してお伝えしてきたのは、 本当の癒しは、ご自身にしかできません。 
 「自立具現化コーチング」という独自の理論により、 ・過去と未来を今ココに集約させ ・究極のパートナーからアドバイスを受ける ・本当に望んでいる思いを発信源に、過去の記憶を癒す 方法を編み出しました。 
 どうぞよろしくお願いいたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください