「本当に?」と疑ってしまった『人生変えたご縁』。リアルさにものすごくフォーカスしていますが、言葉が溢れ出てきて、自動書記に近い状態。気づいたら深夜1時を回っておりました。
再来店
2ヶ月前、お客様から届いた感想メール。「場の空気が澄んでいた」という言葉が、記憶に深く残っていた。
そのお客様が、再来店。 予約は2ヶ月待ちにもかかわらず、即座に申し込んでいたという事実が、スタッフの間でも話題になっていた。
「佐藤様、あの夜のあと、すぐに次の予約を入れてくださったんですよ」 「2ヶ月待ちなのに、迷いなく。」
厨房の空気が、張り詰める。真価が問われているような気がしている。どんなことになろうとも、絶対に感動を分かち合って店を出ていただく覚悟で臨んでいる。そのための私なのだ。
食事を終えたお客様が、厨房の奥に向かって一礼。その所作に、場の空気が奮える。
「こんにちは。店長の外舘美奈です。先日は本当に素晴らしいコメントをいただき、スタッフ一同感動いたしました。かつ即座に予約を入れてくださり、今日に至れましたこと、心より感謝しております。」
「はい!前回の感動が忘れられなくて、また来ました。この空間にいた時間が、今も体に残っているんです。前回は家族がいたから、あまり話せませんでしたね。」
私は、大きく頷いた。スーシェフの悠太が声をかける。
「もしよければ、初めていらした時のこと、少しだけ教えていただけませんか?」
初対話

「息子の結婚が決まって、結納の前夜でした。こじんまりとした静かな場で、家族と過ごしたくて探していたんです。口コミで見つけて、直感で選びました。
でも、料理だけじゃありませんでした。場の空気が、澄んでいたんです。料理を通じて癒しや希望や情熱を湧き立たせるような・・・。明らかに美味しさだけではない、ステキな魅力を感じたんです。」
私は、溢れ出る思いに任せ、言葉を返した。
「前回のメールでもいただきましたが、改めて感謝いたします。私のマリアージュが、届いたんだと思いました。さらに本当にいらしてくださり、生で聴かせていただけることに、感無量です。」
「マリアージュ?そうだったんですね。素人の私には分からないことだらけですが、響き合う調和があったんですね。」
「はい。そうですよね・・・。尊敬の念を込めて、改めてお訊きしたいしたいんですが、いいでしょうか?」
「なんでしょう?」
人生変えたご縁
「私には佐藤様がとても素晴らしく、輝いて見えます。幼い頃からそうだったんでしょうか?」
「ありがとうございます。シェフのようなステキな女性に言っていただけると、天にも昇る気持ちです。私はもともと専業主婦で、小さなアパレルショップから始まったんですよ。こうして都内へ頻繁に来れるようになったのも、本当につい最近のことです。」
「そうだったんですね。では何がきっかけだったんでしょう?」
「ある方とのご縁ですね。名前を主に多角的に向き合ってくださった方のおかげです。この方のことを語り出したら、私は止まらなくなってしまいます。いいでしょうか?」
「え!?そんなに佐藤様の人生を変えた方がいらっしゃるんですね?」声色が変わったのが、即座に分かった。
「そうですね。今は営業時間でしょうから、他の方との関わりもありますよね?」
「そうですよね。ご配慮ありがとうございます。佐藤様の声から、語りたくてたまらない雰囲気を感じます。」
「え!?声の変化を感じれるんですか!すごい!先生もそうなんです!」
「先生?佐藤様の先生でしょうか?」
「正確には違いますが、私の人生を変えるきっかけとなった方がいるんです。」
「本当に長くなりそうですね。ではまたあとでご連絡させていただきます。佐藤様がそこまでおっしゃる方、すごく気になります。」
「はい。シェフが予想以上にステキな方だったので、饒舌になってしまいました。あとでオンラインにて、語り合いましょう。」
脳裏に浮かんできた記憶
QRコードを通じてオンラインでつながり、翌日9時からのアポ。予想もしていなかった展開に驚いた。佐藤様がおっしゃる「先生」とは誰なのか、すごく気になっている。佐藤様を「語りたくてたまらない」状態にまで魅せてしまい、《名前を主に多角的に向き合う》《声の変化を感じれる》等、つながりを全く感じない。
こんな胸踊る気持ちになったのは、いつぶりだろう?脳裏に浮かんできたのは、TV取材に応じている師匠のインタビューに感動した場面。高1夏にたまたまつけていたTVで、番組で師匠が現れ釘付けになった。「私が人生賭ける価値があるのはこれだ!」と感じた。
高2で中退し料理の世界へ入って行ったのも、実家での生活に耐えきれなかったことと、「これだ!」という確信だ。その時から、気持ちが揺らいだことがない。当時の感動が、佐藤様の振る舞いから呼び覚まされてきた。
師匠はすでに引退し、隠居なさっている。久々に会いたい気持ちになった。