佐藤真紀子さん。わずかながらですが、小さな一歩を踏みしめています。
あなたにしかできないこと
あなたにしか書けないこと
何でしょう?
私の好きなもの?
奈美さんとの会話から数日が経った。あの日の彼女の言葉が、今でも心の中に残っている。
「まずは、自分の好きなものを見つけるところから始めてみようかな?」
奈美さんの言葉に、私は思わず息をのんだ。
「私の好きなもの・・・?」
そんなこと、いつから考えなくなっていたのだろう?仕事が軌道に乗ることだけを考え、家族を支え、忙しさに追われる日々。その中で「私自身の好きなこと」を意識したのは、どれくらいぶり・・・?
まるで、奈美さんの言葉が私の奥底に眠っていた何かを揺さぶるようだった。
「私も、一歩踏み出さなきゃ。」
その思いを胸に、私は新しいことを始める決意を固めた。とはいえ、何から手をつけていいのか分からない。そんなとき、ふと目に入ったのは、長年手をつけずにしまい込んでいたノートだった。
ノートを開くと、そこには昔書いたアイデアの数々が残されていた。ファッションの提案、ライフスタイルのアイデア、過去に思い描いていた夢——。
「私、こんなことを考えていたんだ。」
ページをめくるたびに、かつての自分が目の前に蘇るようだった。忘れかけていた情熱が、少しずつ心の中に灯るのを感じる。
私の人生の新たな一歩
その夜、龍先生の言葉がふと頭をよぎった。
「名前には、あなたが歩む道のヒントが隠されている。」
私はペンを取り、自分の名前を書いてみた。
佐藤真紀子
「佐」は補佐、「藤」は成長、「真」は真実、「紀」は記す、「子」は新しい命。
「もしかしたら、私は【支えること】で人を成長させ、自分の想いを記していくことで、本当の自分を見つけるのかもしれない。」
ノートを見つめながら、新しいアイデアを書き留め始めた。
「まずは、ブログを書いてみよう。」
自分の経験や気づきを記録し、誰かと共有すること。それなら、今の私にもできる。
次の日の朝、コーヒーを片手にノートパソコンを開いた。キーボードに指を置き、深呼吸する。今まで書いてきた内容や気分とは、全く違う。
「私の人生の新たな一歩」
そう思いながら、最初の言葉を綴り始めた——。
私にしか書けないこと
「これまでの人生で、一番輝いていた瞬間はいつだっただろう?」
指が自然と動き、思い出の一つひとつが言葉となって画面に現れる。大学時代に夢中になっていたファッションの世界、子どもたちが幼かった頃に感じた幸せ、自力で店を立ち上げたときの達成感——。
「私は、これまで何を大切にしてきたんだろう?」
ふとした瞬間、心が軽くなった気がした。これまでの人生を振り返ることで、今の自分が持っている強みや情熱の源泉を見つけられるかもしれない。
「私にしか書けないことがある。」
気がつくと、指は止まらず、次々と文章を綴っていた。誰かに評価されるためではなく、まずは自分のために書く。それが、最初の一歩だと思えた。
ブログのタイトルを考えた。「真紀子の自分発見ノート」。それは、ただの記録ではなく、未来へと続く道標になるものだ。
「よし、これで公開してみよう」
投稿ボタンを押すと、心が高鳴った。初めての一歩を踏み出した瞬間。これから、どんな変化が待っているのだろう。
新たな扉が開かれた気がした。