響鳴する魂と新たな役割〜早乙女芽衣子さん物語13


芽衣子さん、いよいよ新ステージです。

導かれた扉

玲子ちゃんから送られてきたメールを、私は何度も読み返した。コミュニティの代表者、佐々木さんの連絡先と、玲子ちゃんからの温かいメッセージ。胸の高鳴りは、優花との再会を果たせたかのように、私を突き動かした。意を決し、佐々木さんに連絡を入れた。

数日後、コミュニティ「いのちの灯(あかり)」の集会に初参加。会場は、市内にある小さな公民館の一室。緊張で手が震える中、扉を開けると、そこには十数人ほどの男女がおり、自然な円形に椅子が置いてある。皆の顔に共通しているのは、私と同じ、深い悲しみを抱えている影。

誰かが息を呑んだ気配がした。前県知事という、毎日のようにTV等で見ていた顔が、突如目の前に現れたのだ。辞職の理由は、あえて公表していない。「なぜあなたが?」と不可思議に感じるのは当然かもしれない。そんな中、意図的に気づかないふりをした。

「こんにちは。よくいらしてくださいましたね。ありがとうございます」会の前に声をかけてくださった方がいた。玲子ちゃんのお姉さんの敦子さん。電気工事の職務中に高電圧を浴びる事故で、一瞬の出来事だったそうだ。2姉妹の母として立派に育て上げ、今では5人の孫がいるという。

魂の響鳴

佐々木さんの温かい司会で、集会が始まった。 「今日は新しい仲間が来てくれました。早乙女芽衣子さんです」 皆が温かい拍手で迎えてくれた。その優しさに、恐縮さが緩んできた。「私はここにいていいんだ」と認めてもらえているのが伝わってくる。

集会は、形式ばったものではない。各々が自分のタイミングで、胸の内を語るだけ。最初に口を開いたのは、高校生の息子を病気で亡くしたという女性。彼女は、息子の死を「無意味なこと」だと考えていたと、震える声で語った。「ここで皆と話すうちに、彼の命は私に、痛みに寄り添うという使命を与えてくれたんだって思えるようになったんです」

次に話した男性は、交通事故で妻を亡くしたという。彼は、後部座席で眠っていた娘と助手席の自分が助かったことに罪悪感を抱え続けていた。「妻が命をかけて、私たちを守ってくれたんだって思うようになりました。娘と生きることが、妻への一番の供養なんだって」

彼らの言葉は、私の胸に深く突き刺さった。それは、龍先生が教えてくれた「魂の願い」や「昇華」という言葉を、彼ら自身の言葉で語っているようだった。私も、この人たちと同じなのだ。同じ痛みと、そこから見出した希望を抱えているのだと、心から感じた。

再出発の灯

私の番が回ってきた。私は深呼吸をし、ゆっくりと話し始めた。優花の自殺で県知事という役職をやめざるを得なくなってしまったこと、後追い自殺を考えたこと、そして龍先生との出会い。優花のメッセージを伝えると、皆の目が涙で潤い、鼻をすする音が部屋中に響き渡った。それは、同情の涙ではない。皆の魂が、深く共鳴している証拠のように感じた。

「優花の死を、私はただの悲劇では終わらせません。この経験を、誰かの救いにつなげたい。私は、優花との再出発を、この場所で始めたいと思っています」

私の言葉に、皆が拍手しながらうなずいてくれた。それは言葉以上の温かい肯定だ。私は、1人ではない。ここに、私の新しい居場所がある。そう確信した。

共鳴する魂と新たな役割〜早乙女芽衣子さん物語13

集会が終わり、私は佐々木さんに声をかけられた。 「芽衣子さん、あなたの言葉には、大きな力があります。ここ『いのちの灯』で、あなたの経験を必要としている人がたくさんいます。もしよろしければ、この活動を一緒に広げていきませんか?」

私は、優花との約束を胸に、勇気ある一歩を踏み出す気持ちでうなずいた。それは、私の「自己信頼」という種が、芽を出し始めた瞬間なのかもしれない。再出発の灯を掲げきれた安らぎを胸に秘めながら。

#魂
#娘
#交通事故
#龍
#妻

新しい扉〜早乙女芽衣子さん物語12

言葉にできない叫び

龍先生との対話から数日後。対話を通じて体感した思いを、ブログに表現しよう。ブログにログインしキーボード打ち始めた。・・・言葉が出てこない。思いはあるが、「書いても誰も受け止めてくれない恐怖感」「そもそも書きたい気持ちはあれども、言葉にできないもどかしさ」があることに気づいた。

スマートフォンの連絡先をスクロールしながら、ある名前で指を止めた。高橋玲子さん。優花が亡くなった直後、誰よりも静かに寄り添ってくれた。警察署の霊安室前のソファーで、私の震える手をそっと包んでくれた。

県知事当時、私の講演のスピーチライターで、公私ともに関わっていただいていた。娘の自殺の連絡があった際、真っ先に電話していた信頼する女性だ。53歳の彼女と娘の歳が近いこともあり、「玲子ちゃん」と親近感があった。

「今、少しだけ話せますか?」 震える指でメッセージを送ると、即「もちろん」と返信があった。その4文字に、胸の奥からこみ上がる感情。平静を保ちながら、日時と場所を調整した。

長年信用できていた重み

再会した喫茶店で玲子ちゃんと向き合った。彼女の心配そうな眼差しに、堰を切ったように話し始めた。優花が亡くなった後の、糸が切れ何もできずゴミ屋敷化していた日々。後追い自殺を考えたこと。龍先生との出会い。優花が私に伝えてくれたメッセージ。言葉を選びながら、この胸に秘めていた痛みを、初めて他者に打ち明けた。

玲子ちゃんは、何も言わずうなずきながら、ただ聴いてくれた。私の言葉が途切れると、長い沈黙が流れた。私は、自分が何を話したのか、それがどう受け取られたのか、怖くて仕方なかった。

彼女の口から出たのは、想像を遥かに超える言葉だった。話してみて感じたのが、私は彼女個人は知っていても、周囲の関係性までは知らなかった。彼女をスピーチライターとして長年信用できていた重みを、今初めて知った。

新しい扉〜早乙女芽衣子さん物語12

「芽衣子さん。まずは、私に話しかけてくださって、ありがとうございます。私から何かを言うと、強要になってしまう気がして、ただただ祈る日々でした。語れないことも、語りたいという気持ちも、どちらも大切です」 そう言って、彼女は朴訥に語り始めた。

「実は私の姉も、夫を事故で亡くした経験があるんです。芽衣子さんは、小さなコミュニティには興味ありませんか?親兄弟や友人等、大切な人を亡くした皆さんが集まるそこは、言葉にできない悲しみを抱え、互いに支え合う場所です。芽衣子さんが話してくれた優花さんのメッセージを、きっと真剣に受け止めてくれますよ」

新しい扉

私の心臓が、大きく、力強く鼓動した。信頼する人を通じたつながりが、想像もしなかった新しい扉を開こうとしていた。その日の夜、高橋さんから一通のメールが届いた。そこにはコミュニティの代表者の連絡先と、彼女からの温かいメッセージが添えられていた。

「芽衣子さんの一歩が、同じように悩み苦しんでいる誰かの希望につながりますように」

私は、優花との再会を果たしたかのように、胸が高鳴るのを感じた。

「優花。私の声は、確かにちゃんと届いたよ。」喜び溢れる気持ちを、グッと握りしめた両手に込めた。

#喫茶店
#感情
#彼女
#龍
#娘

希望の輪郭〜早乙女芽衣子さん物語11

痛みの中に芽生えた光

「あの痛みを味わいきったことで、何かが変わった。体の奥底から、凍っていた何かが溶け出すような感覚があった。」

夜明け前の静寂の中、ベッドの中でそっと目を開けた。先日の激痛を思い出す度、胸を締め付けられるような感覚は消えない。しかし今はそれだけではない。温かい、確かに温かい何かが、胸の奥で息づいているのを感じる。

優花の笑い声が、風のように私の胸を撫でていく。その声は、私を責めるのではなく、前へ進めと背中を押してくれる。 娘の死に対する自責の念は、確かに残っている。だが、それだけではない。まるでこの経験には意味があるのだと、全身で訴えられているような気がした。

数日後、再び龍先生との対話。以前よりも、その表情には確かな光が宿っている。

「芽衣子さん、前回の対話から何か心境の変化はありましたか?」龍先生の声は、いつものように穏やかで、心にすっと沁み込んだ。

「はい、龍先生。娘の死を、ただの悲劇として終わらせたくない思いが、日に日に強くなっています。意味を見出したいですね」ゆっくりながらハッキリ答えた。

龍先生が静かに頷く。「素晴らしい変化です。その思いこそが、次に進むための扉を開く鍵となります。」

魂の願いとの対話

「では今日は、芽衣子さんの心の中にある『娘さんの魂が今、何を望んでいるか』、そのメッセージに耳を傾けてみましょう。」龍先生の言葉に、心臓が小さく跳ねた。

「え? 亡くなった後にも、望みがあるんですか? そんな都合の良いことなんて・・・。」思わず声に出ていた。

龍先生が微笑む。「魂には、生前に成し遂げられなかったことや、伝えたかった未完の願いが残ることがあります。例えば分かりやすく、芽衣子さんが今死んだとしましょう。未練が残りませんか?その未練をそのままにしておきますか?」

「絶対にあり得ません」

「ですよね。だからこそ優花さんの想いを芽衣子さんが受け継ぎ形にすることで、新たな希望が生まれるんです。魂の昇華とは、痛みを抱えたまま、それでも誰かのために歩み出「だからこそよかった」となること。それは悲しみの中に灯る小さな祈りのようなものです。

優花さんの思いは、確実に届いています。これから、優花さんのメッセージを受け止めるアンテナ受信機をイメージしてみましょう。優花さんの想いを映し出すスクリーンになってあげるんです」

龍先生は、瞑想を促すように静かに目を閉じた。私もそれに倣い、目を閉じ深呼吸を繰り返す。意識が次第に研ぎ澄まされていく。脳裏に、あの子の笑顔が浮かんだ。幼い頃、無邪気に駆け回っていた姿。

気づけた使命と決意

希望の輪郭〜早乙女芽衣子さん物語11 優花さんからのメッセージ

「・・・この感覚でしょうか?『お母さん、私の分まで生きて。そして、私と同じような悲しみを抱える人が、一人でも減るように、あなたの経験を伝えてほしい』と。」目から、止めどなく涙が溢れ出してくる。

「いかがですか?芽衣子さん。それが優花さんからのメッセージだとしたら?」

「・・・涙が止まりません。悲しいだけじゃない、温かい涙です。優花の死が、私の人生の終わりではなく、新たな使命を与えてくれたのだと、今ハッキリと感じています。」声は震えていたが、そこには確かな力が宿っていた。

「はい。素晴らしいです」

「私は優花の声を胸に、これからの人生を歩んでいきます。この深い痛みは消えることはありません。その痛みの中にこそ、誰かの心を照らす希望の光があることを知りました。」

龍先生は、深く、慈愛に満ちた眼差しで見つめてくれている。「芽衣子さんのその決意こそが、優花さんの魂を安らげ、多くの心を癒す光となりますよ」

私は優花の声を胸に、語り始めよう。この痛みが、誰かの希望になることを信じて。今はまだ、小さな光でも、必ずその光は広がるはずだ。

優花、あなたの願いを、私が生きて届ける。どうか、見守っていてね。

#瞑想
#魂
#痛み
#深呼吸
#光
#龍

痛みの先にある希望〜早乙女芽衣子さん物語10

久々に施術家としての感覚をよみがえらせました。3万人超の施術経験あってこその今だと、改めての実感です。

ようやく踏み出せた一歩

龍先生と語らえたことで、ようやく事実を受け止めきれている。以降もいろいろとお手伝いいただけるようになれたことにホッとしている。これから2回目の対話が始まる。

「芽衣子さん、先日はありがとうございます。芽衣子さんの人生に関わらせていただけますことを嬉しく感じています。

今日は、前もってお伝えいただいていた『娘さんの自殺の原因についての探究』というテーマでよろしいでしょうか?」

「はい。死の知らせを聞いたその瞬間から、ずっと気になってきたことです。」

「かしこまりました。事実を知れればいいんですね?では、『芽衣子さんを媒介として娘さんの感覚を探る』ということをやってみようと考えていますが、よろしいでしょうか?」

「そんなことができるんですか!?奇想天外な話に聞こえます」

「一見、確かにそうですよね。私、もともと施術家です。今でもそうなんですが、体に触れる必要がなくなってしまったため、『施術』とは名乗らないようにしています。今主軸にやっていることの方が、私にはふさわしいですしね。」

「まだよく分かりませんが、先生には相応の経験があって成果へ導けるということなんですね?」

「そうですね。効果は信頼関係に比例しますが、あらゆる疾病に対応できます。特に私の場合、精神面における分野に関わらせていただくことが多かったです。

何をやるのかと言いますと、芽衣子さんの脳に訊きます。芽衣子さんの体を会社に例えると、脳は本部です。血液や筋肉は末端の専属部署で、脳によってすべての情報が一括管理されています。芽衣子さんが娘さんに思いを馳せた分、周波数のチャンネルがつながるんですよ」

「初めて聞く言葉が並んでいて、やはり意味が分かりません。それでも理解できたのは、効果は信頼関係に比例するんですね?」

「はい。理解は難しいかもしれませんが、私との信頼関係次第です。例えば私がお伝えしたことに対して、どれだけ本気で受け止めていただけるかで、実践する度合いも変わりますよね?」

「なるほど。であれば、大丈夫です。でなければ、今こうしてサポートをお願いしてもいませんから」

「ありがとうございます。よかったです。ではこれから、モードを切り替えてまいります。

あらかじめお伝えしておきますが、私が予想する限りには、芽衣子さんにはかなりの痛みを伴います。心の準備はできていますね?」

「よろしくお願いいたします」

私を通じた娘の声

痛みの先にある希望〜早乙女芽衣子さん物語10  娘 優花が自殺した理由

「・・・・・・・底なし沼のようなぬかるみと、全面的に覆われた高い壁があります。ぬかるみの正体は、土台や基礎です。『砂上の楼閣』のように、何かを築き上げたいのに、何をどうすればいいのか分からず困っているイメージ。と言われて、今どんな気持ちが湧いてきますか?」

「・・・なぜなんでしょう?私の意思とは関係なく、涙が・・・」

「やはりそうなんですね。その涙は、優花さんの涙です。当初、『芽衣子さんを媒介として娘さんの感覚を探る』とお伝えしましたよね?今、芽衣子さんの体の反応で起きていることは、優花さんです」

「え・・・・・・・・・、優花・・・・・・・・」

「ぬかるみがなぜ、どのように困っていたんでしょう?・・・『私はダメ人間だから』と返ってきます。反応上でもそうですね。『TVで華やいでるお母さんを見ていて、何の取り柄もない私にうんざり。』反応上でも、そう確認できます。いかがでしょう?」

「え・・・・・・・・?どういうこと?私と比較していたの?」

「はい。反応上、『Yes』と出てきます」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」私は絶句した。混乱している私の感覚と、スッキリ澄み渡ってきている感覚が両立している。

「高い壁にどんな意味があるのか訊いてみます。・・・やはり『私はダメ人間だから』と返ってきます。環境的には開けていても、心を閉じこめ隔絶された状況です。私の自衛官当時、価値観が合わず強烈な孤立感を味わった感覚がよみがえってきます。」

「そんな・・・・・・・・」

「結果として、『私はこの世にいない方が社会貢献になる』と考えたからだと返ってきます。いかがでしょう?」

痛みの先にある希望

「そろそろ訊いてもよさそうですね。何がきっかけで、自殺の引き金となってしまったんでしょう?・・・・・・・・・長い沈黙でしたが『好きな人と別れたこと』だそうです。反応上でも『Yes』と返ってきます。」

「・・・だから!年初めに会った時は、心なしか軽そうだった。あの時、付き合っている方がいたのね。言ってくれればよかったのに」

「『言ったところで聴いてなんてもらえそうにない』って感じたようです。」

はじめに言われていた「痛み」の意味が、今ハッキリと理解できた。もちろん体に触れられているわけではないんだから、体の痛みではない。娘のことを全く理解しようともせずに、政治に夢中になっていたのだ。

《娘を死なせてしまったのは私》何となく予想していたが、当たらずとも遠からず。空いていた心のスキマに、ドーッと押し寄せてくる感情がある。明確に「痛み」を感じている。

「芽衣子さん、これからですよ。『事実を知りたい』とご要望いただきましたので、このような対応になりました。これからをどう生きていくかによって、『だからこそ』と事実を感謝できるようになれます。」

「え!?この痛みを感謝へ?どうやって?」

「はい。どうぞ楽しみにしておいてください。まずは、今湧き出ている感情をちゃんと味わいきりましょう。」

#感情
#感謝
#予想
#価値観
#痛み
#龍

存在をたどる旅(名前による解放)〜早乙女芽衣子さん物語9

『芽衣子さん物語』久しぶりです。どうしても書き進める気になれず、保留しておりました。

娘 優花さんの死に伴い、遺品整理をしていて見つけた私の著『自分の名前を愛する力』。こちらを通じてメッセージを送ろうと試みるも・・・。

ようやく送れた

今朝、ようやく送れた。龍先生とのご縁に感動し、何度もメッセージを送ろうとした。けれど書いては消し、送信ボタンの前で手が止まる。それを繰り返すうちに、過ぎていった日々。娘の死をどうしても曝け出したくない――けれど、なぜか先生には、伝えてもよいと思えた。

数時間後、丁寧な返信が届いた。「よろしければ、お気持ちやご状況を少しお聴かせいただけませんか?」その一文で、受け止めてもらえたような気がして、和らいだ。

やりとりを重ねるうち、自然と娘のことを打ち明けていた。メッセージでは伝えきれない思いが溢れ、オンラインでお話しすることに決めた。

当日。画面越しの龍先生は、想像よりも柔らかな雰囲気。表情も声も穏やかで、どんな言葉も否定せず、まず「聴く」ことに徹してくれている。

「早乙女さん、今日は本当にありがとうございます。勇気を出してご連絡くださったこと、深く感謝しています」

その言葉に、胸が熱くなった。私は、今まで一度も感謝される存在として、娘の死を語られたことがなかったからだ。まず私自身が受け止めきれない。

涙をこらえながら、ゆっくりと話し始めた。優花のこと、名前に込めた意味、そして何も伝えられなかった後悔。「名前って、なに?」という問いが、今も私の中に生きていること。

先生は、何度も頷きながら聴いてくれた。

名前のちからに導かれて

「早乙女さんの言葉は、まさに『存在をたどる旅』ですね。優花さんが残してくれた問いは、きっとこれから芽衣子さんの人生そのものになっていくんでしょうね」

存在をたどる旅――その言葉が、私の胸に深く残った。

初対面の相手に、自殺という現実を語るなど、本来であれば到底できない。けれど、画面越しに映る龍先生の表情は、どんな言葉よりも誠実さを感じさせた。こちらが話し出すまで、決して急かすことなく、ひたすら黙って待ってくれていた。

「娘の名前は、優花といいます。私が名付けました。」

自分の口からその名前を発した瞬間、胸の奥で何かが崩れた。あまりに長く、あの子の死と、優花という名を結びつけることを拒んできたのだ。だが今、初めて名前を通じて、娘の存在感をつながり直せたような気がした。

話しているうちに、言葉にならなかった思いが、少しずつピント合わせが進んでいく。

「この名前には、『やさしさ』と『花のような笑顔』を込めました。でも・・・その思いを、あの子に伝えてこなかったんです。」

涙がこぼれる。自責や悔いではなく、「ようやく言えた」ことへの安堵に似た感情。

「優花さんは、きっと今その言葉を聴いていますよ。そして、ようやく愛されていたと実感している気がします。でなければ、その涙がウソになります。あくまでも私が受けた感覚ですが、その涙は優花さんが納得し理解してくれた涙です」

この言葉が、私の心を、やさしく深く溶かしていった。

存在をたどる旅(名前による解放)

対話を終えた後、しばらく椅子に座ったまま放心状態。目の前の画面はもう閉じているのに、そこに先生のまなざしがまだ残っているような感覚がある。優しいけれど真っ直ぐで、私自身が避けてきた問いに、正面から光を当ててもらえたようだった。

「名前って、なに?」

この問いが、今までとは違って聞こえていた。あの子が遺した問いが、私の中で再び息を吹き返している。ただの悲しみの象徴でも、乗り越えるべき痛みでもなくなった。未来へつながる問いとして、生きている。

私は、自分の名前をこんなにも他人事のように扱ってきたのだと思い知らされた。「名前は識別情報ではない」「名前は、永久に寄り添う言葉だ」――龍先生の言葉が、胸の奥にじんわりと沁みていく。

それにしても、不思議だ。誰にも言えなかったことを、こうもあっさりと話していた自分に驚いた。涙も出なかった今までがウソのように泣いてしまった。言葉たちが、ようやく意味を持った。ようやく、本当の始まりに立てた気がする。

まだ何も解決していない。優花がなぜ命を絶ったのかも、私がこれから何をすべきかも、分かってはいない。それでも、1つだけ確かなことがある。

「私は、逃げずに向き合おうとしている」

たったそれだけのことが、こんなにも心を軽くするのだと、今さらながら驚いている。明日が少しだけ、こわくない。

存在をたどる旅(名前による解放)

#感謝
#感情
#メッセージ
#旅
#龍
#自殺

託して加速する先鋭化〜藤堂富美子さん物語18&1ページセッション⑤

先日、物語17で終えた藤堂富美子さん。当初は「1ページセッションシリーズ」を4話で終える予定でしたが、「富美子さんが1ページセッションを受けたらどうなるだろう?」とアイデアが湧きました。

託すことで広がる視界

舞台の本番直前、私は弟子たちに舞台演出の最終調整を完全に託していた。かつてなら、細部まで自らで確認し、納得しない限りGOサインは出さなかった。今は違う。

「私が全てを抱える必要はない。むしろ、信頼できる人に託すことで、私は本当に必要な一点に集中できる」

私が託すことを学んだのは、この1年間で受けた「自立具現化コーリング」と「遺名コーリング」、そして先日の「人生の1ページセッション」だった。自分の物語を、あえて第3者視点から整えてもらうことで、過去と未来の繋がりがより鮮明になった。舞台でも人生でも、託すことで自分の役割が際立つ感覚が生まれたのだ。

AIの進化にも似ていると感じている。表面的に見るなら、計算機が世に出たことで暗算力を奪ったことになる。しかし大極的に考えるなら、複雑な構想や高度な判断へ時間を費やせるのだ。AIや信頼できる人へ「託す」ことで、自分の才能をより先鋭化するための余白ができる。

AIと弟子による先鋭化の余白

第3者視点で物語を整えてもらうことで、過去と未来の繋がりがより鮮明になり、舞台でも人生でも役割が際立つ感覚を得た。よく「相違点を喜べ」等の格言を目にしていたが、まもなく80にしてようやく理解できたことが嬉しい。

託して加速する先鋭化〜藤堂富美子さん18&1ページセッション⑤

例えば舞台演出を弟子に託したことで、舞の「間」と「呼吸」の微調整に集中できた。その微調整が、舞台全体の空気を一変させた。観客からは「先生の舞は、時が止まったように感じた」と大絶賛の声が相次いだ。

家庭でも同じだ。孫の学校行事や家族旅行の計画は娘たちに任せ、私はその場で全身全霊をかけて愛情を注げる。娘たちが私のことを気遣ってくれている安心感がある。「あなたたちに任せてよかったわ」と心から笑えたのは、龍先生の「自分と他人への信頼度は比例関係にある」を体感的に理解できているからだ。

私においては、託すことは放棄ではない。託すという行為は、私自身を信頼しているからこそできること。だからこそ使命をより鋭く、深く研ぎ澄ませるための選択肢となれるのだ。その先鋭化は、確実に加速している。

崩壊と再生と恩返し

思えば娘の泣きながらの訴え「それって、お母さんの自己満足でしょ!?」と言われた瞬間、背筋が凍りつく実感があった。今まで築き上げてきたすべてが、見事に崩れ落ちてしまった。

舞にはもちろん、生きることに疑問を感じるようになった。なぜこんなにも不安で惨めな気持ちになるのか、意味が分からない。初めて体験する込み上げてくる感情を、どうすることもできなかったのだ。

だからこそ、佐藤真紀子さんの記事に目を見張れたのだと思う。自分の中に解決策を見出せなかったから。真紀子さんを信頼するからこその龍先生という導線につながっている。これを「運命の導き」と言わずして何と言えばいいのだろう?

「役割を生きるだけじゃなく、存在を生きる。そのために私は、これからも託し続けます。──それが、私に命を授けてくれた人々への、何よりの恩返しだから。」

#舞台
#セッション
#人生
#信頼
#龍
#格言

「書けるようになる」よりも「書いていい」〜1ページセッション②

「書いてはいけない」と禁止令

「自分の人生なんて、書くような価値はない」
「こんなこと、人に話したら引かれるだけ」
「どうせ誰にも理解されない」

──そうやってあなたは何年、心にフタをしてきましたか?書けないのではありません。書いてはいけないと思っていただけなのではありませんか?

ある方から「大企業の経営者や著名なアーティストさんならまだしも、私なんて・・・」とコメントいただいたことがあります。逆を言えば、特別でない方なんていません。すべての皆さんは、例外なく天才への可能性を秘めています。

もし「書いていいのかもしれない」と思えた瞬間から、何が始まるのか?「人生の1ページセッション」の本質は、あなたをあなたご自身の人生の主人公として照らすことなのです。

問いの力は、記憶の奥から扉を開く

当セッションは、何かを教える時間ではありません。むしろ、すでにあなたの中にある「答え」を思い出していく時間です。「人生の1ページ=《◯◯》」は、あなたオンリーの「答え」を実感するための布石に過ぎません。

問いの力とは不思議なものですね。過去に封印されていた記憶や感情、無意識の反応に、
自然と光を当ててくれます。

例えば──

「あなたの人生の1ページとは?」
「あなたの生涯史を書くなら、何章の何ページに分かれますか?題名は?」
「あなたが望む必要な方へ届き、感動したファンの皆さんから手紙が届くなら、何と書いてあるでしょう?」

こんな問いかけに、涙を浮かべながらぽつりと答える方が多くいらっしゃいます。なぜなら答えが「出た」のではなく、すでにありながらも無価値だとみなしてきたものに気づけたからです。

名前のないものに《名前》を与える

当セッションでは、あなたの人生に漂っていた「名前のない時間」に、1つのキーワードをつけていきます。「人生の1ページ=《◯◯》」を通じて、

それは、感情かもしれません。
それは、場面の情景かもしれません。
それは、今のあなたが「ようやく意味づけできた」記憶かもしれません。

キーワードが与えられた瞬間、それは「空白」や「黒く塗りつぶされた」人生ではなく、
「◯◯という名の1ページ」になります。

かつて「過ち」だと思っていた出来事が、「気づき」として人生の核に返り咲く。そんな2人3脚の時間を、数千回以上関わらせていただきました。

例えば「アイデア力」が強みだとおっしゃる方。同時に「思い込み」が悪だと考えていらっしゃいました。「思い込みが悪だとおっしゃいますが、奇抜なアイデアの原点は思い込みでは?」「思い込まなければ新たな仮説が生まれるわけがありません。そんな思い込みも悪だと?」に対して、表情と声が完全に変わりました。

「過去の事実」は変えられないが、「意味(解釈)」は変えられる

人生に起きたことは、変えられません。しかし「それをどう意味づけるか」は、今この瞬間から変わり得ます。

「人生の1ページセッション」とは、まさにその転換点。

・書けなかったのではなく、書いてはいけないと思っていた。
・語れなかったのではなく、語ってもいいと許せなかった

そんな思い込みの鍵が、問いによって思い出され外れていくのです。

問いがあなたの人生の主導権を取り戻す

このセッションでお伝えしていることは、ノウハウではありません。あなたの直感や感覚、無意識の反応を「技術として意図的に再現可能にする」入り口です。

分かりやすく事業が不調な理由を、先祖の因縁が原因だとしましょう。原因を解決するためには、墓を作り直せばいいでしょうか?どこかの寺院で先祖供養すればいいでしょうか?原因探究は、本当に正しいのでしょうか?問題を問題だと肥大化させることが、最大の問題なのです。

「人生の問い方のレッスン」とも言えます。「問いの質」によって、千差万別の解釈が生まれます。

・なぜ、私はあの時泣いたのか?
・なぜ、あの言葉だけが心に残っているのか?
・なぜ、あの一言が忘れられないのか?

ぜひあなたに、自己対話の質問レベルを上げていただきたいのです。なぜなら生き方への意味が変わるから。過去の意味づけが変わると、未来の選択も変わっていくのです。

「書けるようになる」よりも「書いていい」

「書いてはいけない」と禁止令を出していた状態から「書いていい」へとつなげるセッションです。「自らに許可を出す」人生を根幹から変えていく最重要な秘訣です。私も含めた多くの皆さんが、知らず知らずのうちに禁止令を発しているのですから。

例えば1日の中で、「ダメ」と何回使っているか数えてみてください。自覚できたおかげで気にしてきましたが、まだまだしぶとく残っているものとみなしています。

「探しても答えは見つからない。ながらも問い続けるうちに、自然と浮かび上がってくる」こんな経験ありませんか?これこそが本来の「直感力」であり、その力をあなた自身が「技術として扱えるようになる出発点」でもあるのです。

【次回予告】

次回③では、
「言葉にならなかったことが、言葉になったとき」
人はどのように変わるのか──

「納得と申込導線」をテーマに、
実際のセッションで起きている“感情の地殻変動”をお伝えしていきます。

#経営者
#感情
#人生
#セッション
#直感
#思い込み

本当の言葉〜早乙女芽衣子さん物語8

問いの解像度

夜、久々にぐっすり眠れた。泣いたあと、心は静かで穏やかだ。感情が嵐のように吹き抜け、今は凪のよう。泣けたことで感情解放できた手応えがある。「健全な精神は、健康な体から」とよく言われるが、まさにそのとおりだと実感している。

朝5時。目が覚めて、しんと静まり返ったベッドの上で、天井を見つめながら考えている。

「私は・・・何を分かっていたのか?」

娘の名前――優花。名づけたのは私だ。でも、その名前に込めた意味を、自分の口からちゃんと語ったことがあっただろうか?誰かに訊かれて、答えたことはあるかもしれない。でも、あの子に向かってまっすぐに「あなたの名前はね」と話した記憶を、どうしても思い出せない。

穏やかな静けさが、なおのこと苦しい。答えがないからではない。問いの解像度が、水アカがついた磨りガラスのまま。意識はハッキリしているのに、「名前ってなに?」という問いの輪郭だけが、いつまでも胸の奥に残り続けている。まるで、娘が今も問いかけてくるように。

本当の言葉

ベランダに出てみた。空気は冷たく、晴れて澄み渡っている。頬を撫でる心地よい風に、ようやく深く呼吸できた気がする。

「私は、あの子に何を伝えたかったのだろう?」

ずっと「正しさ」に縛られて生きてきた。政治の世界で、たった1回の失言で命取りになる場面を何度も見てきた。だからこそ、いつしか言葉を選ぶ癖がつき、感情を飲み込むようになっていたのかもしれない。

本当の言葉〜早乙女芽衣子さん物語8

あの子は本当の言葉を求めていたのだ。取り繕わない、傷つこうが悩んでいようが、絶対に揺るがない魂からの言葉。分かっていなくても、分かろうとする姿勢。それを、ずっと見せられなかった。

いなくなった今、優花にかけてあげたい言葉を探すも、一向に出てこない。何を言ってもうわべだけの、納得には遠く及ばない気がしてならない。

再出発の教本

Kindle端末は、今もリビングのテーブルに置かれている。『自分の名前を愛する力』あの本は、もはや「読み終えた本」ではなくなっていた。

娘が残した問いを、私が今ようやく引き継いだという証。私にとって『自分の名前を愛する力』は、娘の遺書ではない。再出発の教本なのだ。

泣いたことも、痛んだことも、決して無駄にはしたくない。あの子の問いとともに、もう一度、人生を考え直していく。名前を、そして私自身を。

考えに考えてみて分かったことがある。いくら考えても、現状では優花への言葉を紡ぎ出すことは無理だ。龍先生に助けを求めてみてもいいのではないか?と考え至ってきた。

「龍 庵真 様

はじめまして。
先生の著書を読ませていただき、大変感動しております。
困っていることがあり、相談させていただけませんでしょうか?
よろしくお願いいたします。

早乙女 芽衣子」

メッセンジャーで送ってみた。この送信ボタンを押すのに、勇気を要した。私は今、問いを抱えたまま進もうとしている。あの子の問いに、今度こそ私なりの答えを生きていくために。

最高の償い〜早乙女芽衣子さん物語7

最高の償い

読み終えKindleを閉じた後も、私は長い時間、身動きできずにいる。この本が、娘 優花にとって、どれだけの意味を持っていたのか――その想像だけで、胸が締め付けられる。「もう少し、もう少しだったのに・・・」あまりにいたたまれない。

タイトルは『自分の名前を愛する力』。私は、長年「名前」に無関心だった。政治の世界で、何千という名前と向き合ってきたはずなのに、実の娘の名前すら、深く受け止めていなかったのだと、今になって痛感している。実の娘と向き合えていないのに、県知事として務まるわけがない。やはり知事を辞めて正解だったと感じている。

当初は死んで詫びることがイチバンだと考えていたが、娘の私を通じて、置き忘れていた本来の役割に気づかせてもらえた。優花の思いを背負って生きていくことが、最高の償いになるのではないか?そんな思いが芽吹いてくる。

完読してみて感じること。全編を通して、著者である龍 庵真さんの言葉は、芯があるのに温かい。まるで私に、いや、かつての優花に語りかけてくるかのようだ。

「名前とは、存在を受け止めるための最初の肯定である」

最高の償い〜早乙女芽衣子さん物語7

この一文に、私は泣けてきた。そして思った。あの子がもし、これを最初から最後まで読めていたら、何かが変わっていたのではないか?

本当に残念ながらKindleに残された履歴は、前書きの途中で止まっている。きっと、読むには心が限界で、枯れ果てていたのだ。もしくは――「どうせまたきれいごとでしょ」と、どこかで冷めた線を引いていたのかもしれない。

「名前って、なに?」

優花が遺したメモ。「名前って、なに?」という短い問いが、今も私の中で響いている。そして、それに対する答えは、まだ見つかっていない。

ようやく分かってきたことがある。名前とは「識別情報」で終わるものではないということ。名前には、感情が宿り、記憶が重なり、その人だけの背景がある。誰かに与えられたものかもしれないけれど、人生の中で、意味も価値も変わっていく。

あの子が問いかけてくれたからこそ、私は今、名前と向き合っている。そして、自分自身と向き合っている。今までレールの上を生きるよう、無意識に選ばされてきた。娘がレールから外してくれたのだ。レールに戻るかもしれないが、立ち止まれていることに意味を感じている。

この本の著者――龍さんのFacebookアカウントをフォローしサイトを検索している。SNS上では、過激なことは言っていない。むしろ、穏やかに、丁寧に、人の痛みに寄り添おうとしている空気感。

とは言え、まだ何かを「申し込む」勇気まではない。でも、知りたい。この人が、どんな問いを大切にしているのかを。なぜこんな考え方を抱くようになったのだろう?何を目指しているのだろう?

優花の問いが、私の人生を少しずつ動かしている。それが、ほんのわずかでも「再出発」の始まりなら――きっと、あの子も、どこかで少しだけ笑ってくれる気がする。

#無意識
#命
#感情
#娘
#龍
#自殺

残された「問い」〜早乙女芽衣子さん物語6

記憶の中の私

Kindleの電源を落としたあと、私はしばらくその場に座り込む。深く息をついても、胸の奥の重さは解けない。

娘が読もうとしていた――『自分の名前を愛する力』。Kindleの履歴によれば、前書きを読んだ時点で止まっている。何を思い、なぜそれを選んだのか?答えは届かない。

残された「問い」〜早乙女芽衣子さん物語6(優花ちゃんに尋ねられている記憶)

仰向けでぼんやりと天井を見つめながら、ふと1つの記憶がよみがえってきた。――あの子が、まだ幼稚園に通っていた頃のこと。

「どうして、ゆかって名前なの?」

夕方、台所に立っていた私に、優花が華奢(きゃしゃ)な声で問いかけてきた。何か返したはずだが、何と答えたのか、どうしても思い出せない。記憶の中の私は、まな板と向き合っていた。夕食の献立のことしか頭になかった。問いかけの意味も、その重さも、深く受け止めていなかった。

今、その上の空だった自分の姿が、情けなくてたまらない。もしあの時、ちゃんと答えていれば、もしあの子の目を見て、「あなたの名前はね〜」と伝えていれば――私たちは、もっと違う形でつながっていたのではなかろうか?

問いの痕跡

娘はずっと、自分の名前の意味を知りたがっていたのかもしれない。そして、私がそれを語らなかったことを、どこかで悲しく思っていたのかもしれない。だからこそ、「名前って、なに?」という問いが、ノートに刻まれていたのだ。私の胸の内にも、同じ問いが残されたままになっている。

「名前とは、誰かに与えられたものなのか?」
「自分で選び取るものなのか?」
「それとも、背負うものなのか――?」

どの答えも、まだしっくりこない。だが、分からないまま問い続けることが、今の私にできる唯一の誠実だと思えてくる。あの子の問いの痕跡を、私は心の中でなぞるように抱きしめている。それは、娘の声なき声でもあったのだろう。

残された「問い」

その晩、一字一句、読み終えた。閉じたKindleを胸に抱え、しばらくの間、呼吸さえままならなくなっていた。あの子が、こんな本をダウンロードしていたこと。その事実が、ただの偶然ではなかったと今なら分かる。

私は、この本を通じて初めて「名前」というものに真正面から向き合った。政治の世界で何百、何千という名を見てきたはずなのに、「名前とは何か」なんて考えたことは1度もない。

それが、ここには書かれている。「名前とは、存在を受け止めるための最初の肯定である」「名前を愛する力とは、自分を信じる力でもある」と。

――優花は、これを読もうとしていた。誰にも言えなかった迷い・苦しみ・不安。そのすべてを、この一冊にゆだねたのかもしれない。けれど、おそらく前書きで力尽きていた。すでにあの子の心は限界だったのだろう。

私は今、読んだ。読み切った。その上で初めて、あの子の「名前って、なに?」という問いに、心から向き合いたいと思った。

この問いには、答えはないのかもしれない。でも、私はようやく、問いとともに生きていこうと決めた。あの子が残してくれた「問い」こそが、今の私を動かしている。

この本の著者、龍先生に興味が湧き、サイト等検索してみている。SNSの限りには、アヤシイ人物ではなさそうだ。ひとまずは、Facebookのフォローをしてみよう。私も、自分の名前について、問うてみたくなった。

#幼稚園
#不安
#娘
#呼吸
#龍
#ノート