土の匂いが促すもの〜外舘美奈さん物語20

定休日の非日常

定休日の朝。東京駅。昨晩、スタッフに最低限の伝言だけ残した。任せる、というより——任せられる範囲だけを、淡々と切り分ける。

新幹線の中で、胸の奥が跳ねる。「帰る」と言った。言ってしまった。それで現実化している。だから今日は、余計な言葉を増やさない。畑を手伝う。それだけ。

電車の窓に、自分の横顔が映る。昔の顔じゃない。なのに、昔よりも逃げ腰な自分がいる気がして、腹の底が無性にざわつく。

お迎え

改札を出ると、父が先に立っていた。背は少し縮んだ。けれど、立ち方は変わらない。

「・・・来たな。面影はちゃんと残ってるな。すぐに分かったよ」

「うん。畑、どこから?」

父は、言いかけて止めた。
「・・・手、洗ってからにしろ。朝露がまだ残ってる」

車の中は、必要な会話だけが続いた。畑の段取り。腰の調子。最近の天気。母の話題は、出ない。出さない。——出る前に、父の方が話題を切り替える。

家が見えた瞬間、胸の奥が少しだけ冷えた。冷えたというより、熱が一段落ちた。火を弱める前の、あの感じ。

土の匂い

土の匂いが促すもの〜外舘美奈さん物語20

畑に出ると、土の匂いが先に来た。懐かしい、ではない。正しい匂いだと思った。理屈じゃなく。土の匂いが、考える前に膝を折らせる。

母は、すでに端で草を抜いている。背中しか見えない。あの背中は、ずっと記憶の中で固まっていたが、今日は動いている。

「・・・遅い」

声が飛んできて、私は手袋を受け取った。謝りもしない。言い訳もしない。かわりに、畝に膝をついた。

草を抜く。土をほぐす。根を切らないように、ゆっくり引く。作業は単純だ。単純なのに、呼吸が整っていく。私が厨房でやっていることと、似ている。余計な確認が消えていく感じ。

母が、隣の畝へ一歩ずれた。それだけで、距離が変わった。近づいたのではない。重ならない位置が、自然に決まった。

「手、速いね」母が言った。褒めでも評価でもない。観察に近い。

「店で、こういうのもやるから」それだけ返した。

重ね煮も、特集も、封書も言わない。言った瞬間、畑が別の場所になる気がした。

台所の蓋

昼前、母が言った。「1回、上がれ。水飲め」

台所に入ると、鍋が火にかかっていた。母は迷いなく、火を弱め、蓋をした。蓋が閉じる音が、やけに響く。——母においては淡々と、日常の中で決まる音なのだろう。

湯気が、蓋の縁から薄く漏れる。自然とその温度を見ている。嗅いでいる。料理の言葉じゃないのに、分かる。幼い頃に、見ていた風景。体に沁み込んでいた記憶がよみがえって来る。

母は、お茶を置いて、私の手元をチラッと見た。爪の間の土。指先の傷。

「無理すんな。今日は帰るんだろ」

「うん。夜、店がある」

「そう」

それで終わった。会話としては短いながらに、妙に減らせないものが残った。

帰り支度の時、母が小さな瓶を差し出した。梅でも味噌でもない。干し野菜。

「持ってけ。店で使うなら、好きにしろ」

私は受け取って、頷いた。礼を言う言葉が喉まで上がったが、形にしなかった。言った瞬間、「和解の始まり」みたいな匂いが混ざるのが嫌だった。

手順だけを進めた

駅へ向かう車の中、父がハンドルを握ったまま言った。

「・・・母さんな。最近、——」

そこで、父は止めた。止めたこと自体が、情報だった。

私は窓の外を見たまま、「うん」とだけ返した。「聴く準備がある」という意味の、最小限。

改札の前で、父が言う。「また、畑。手が要る時は言う」

「うん。店の定休日なら」

電車が動き出す。もらった瓶が、膝の上で揺れる。

まだ言っていないことは山ほどある。でも、今日の私は、逃げなかった。宣言もしなかった。——手順だけを進めた。

店に戻れば、また火を入れる。けれど今夜は、包丁より先に、土の匂いが手に残っている。

温度と間が伝わる形〜外舘美奈さん物語19

完全にノーマークだったフレンチが、候補打診へ。『昔ながらの重ね煮思想が、現代の料理にどう受け継がれているか』というテーマにどう折り重なっていくのでしょうか?

翻訳事例としての成立

編集部の会議は、報告から始まった。担当は資料を置かず、結論だけを先に言った。

「候補扱い、終わりでいいと思います」誰も「どんな味だった?」とは問わない。
訊いた瞬間、話が平らになる。編集部が欲しいのは評価ではなく、次号テーマに対する「翻訳事例としての成立」だった。

編集長が一言だけ返す。「理由は?」

温度と間が伝わる形〜外舘美奈さん物語19

担当は、言葉を選ばなかった。選ぶ必要がないからだ。「思想を掲げていないのに——揃ってます。説明じゃなく、実践として。——読者が分かったつもりで終わらない、温度と間がしっかり伝わる形がイメージできました」

会議室に、短い間が落ちた。沈黙は躊躇ではない。ここで熱を入れた瞬間に、宣伝が始まってしまうからだ。

本格打診

編集長が、視線を上げずに言う。「取材依頼に切り替える。ただし、言いきらない文面で」

「言いきらない?」若手が反射的に訊いた。

編集長は顔を上げた。「確信したと言い切ると、こちらの物語になる。薄まる。こっちは、事実として手順を踏むだけ。相手が断れる余白を残す」誰かのメモをとる音だけがした。

封書の文面は決まった。熱は入れない。褒めない。煽らない。目的はただ1つ——関係を壊さずに、打診する。本格的に。

同じ夜、もう一通も用意された。地方の寄稿者宛て。外舘美智子。次号テーマの意図と、編集部が探している「看板ではない翻訳事例」について。

封筒が2つ並ぶ。担当者の1人がポツリと一言「次の一手次第なのは、たぶん相手じゃなくて、こっちです。」

会議は終わった。ここからが始まりだ。

必要な手順

私の元に、再度封書が。今度は本格的な打診。予感していたことが現実になってしまった。龍先生に相談し、着実に解放を進めてきた。実現するか未定だったにせよ、心がザワつくことを問題だと解釈しておいてよかった。

40年の隔壁を重く感じていたが、そうも言っていられない。必要な手順だけを先に進めよう。編集部には受領の一文だけ返し、何か動きが起きる前に帰省した方がいいかもしれない。今週末は店が埋まるから無理だ。帰るなら定休日。日帰りで畑を手伝うだけ——。

心を落ち着け、実家へ電話。「今度、帰る。畑、手伝うよ」
父「・・・急だな。店は?」
「大丈夫。日帰りで開店には間に合わせるから」
(奥で母が何かを落とす小さな音)
父が一瞬黙り、すぐ咳払い。「・・・分かった。駅まで迎えに行く」

#幸せ
#瞑想
#父
#畑
#フレンチ
#帰省

出せない名前〜外舘美奈さん物語18

今回は、母 外舘美智子さん。主人公ではありませんが、今回に限り美智子さん視点で書いているので、「私=美智子さん」です。

自然との調和の中に

畑の端で、最後の草を抜いた。手袋を外すと、指先に土の匂いが残る。水を一杯飲んで、台所に戻った。今朝の朝食用に、自家菜園の庭から収穫したばかり。今日は大根と人参が甘い。葉物は少しだけ苦みが立っている。季節の変わり目だ。

包丁で切り、野菜たちの層をつくる。鍋に重ね、塩をひとつまみ。火を入れる前に、いったん手を止める。重要なのはタイミング。鍋の中の食材たちに、どうして欲しいか問いかける。暮らしは、自然との調和の中にある。

朝食後、主人と散歩に出かけることを日課としている。まもなく米寿を迎えるが、100歳を超えても元気でい続けたい。だからこそ日々の活力を、自然の恵みからいただいている。無理をせずに、続けられる形で続ける。

封書の温度

ポストに入っていた封書が目に止まる。封筒は都内の出版社。季刊のコラム連載で、何度もやり取りしてきた編集部だ。台所の隅で、封を切る。紙がすべる音。

文面は丁寧で、余計な熱がない。

・先回の4ページ特集への反響が想定より大きいこと。
・次号以降の構成を検討していること。
・「思想が看板としてではなく、実践として染み出している翻訳例」を探していること。
・現時点ではまだ検討中で、編集部側でも確認を重ねていること。
・もし差し支えなければ、打ち合わせの時間をいただきたいこと。

褒め言葉や称賛はない。続けるための用件だけが、淡々と並んでいる。それが逆にありがたい。続けるための言葉は、いつもこういう形でいい。

先回に限り、コラムと追加で4ページの特集。何を書けばいいのか迷ったが、編集部の助言があって形にできた。読者目線と私の主張を噛み合わせてもらえたことに感謝している。

出せない名前

出せない名前〜外舘美奈さん物語18

手紙を読み終え、折り目に沿って畳む。その時、胸の奥が疼き出す。理由は、言葉にしたくない。しかし、分かってしまうのが本当に厄介だ。

——あの子のことは、出せない。出さないのではない。出したら、余計なものが混ざる気がする。暮らしの話が、別の話になってしまう。私が残したいのは、意味ではなく、手触りだ。温度だ。

鍋の火を見ていれば、それが分かる。火は嘘をつけない。こちらの揺れが、そのまま湯気に出る。味に直結する。

砂時計の砂が落ちきった。火を止める。湯気が上がる。鍋の中で、野菜の層がゆっくりほどけていく。

返事を書く前に、今日の味を確かめよう。焦って決めない。私にできることが何なのか——それは、頭で決めるより、舌と体で確かめた方がいい。

暮らしの中で続いてきたものは、今日も同じように、静かに続いている。

あとがき

次回も、編集長視点です。スタッフに確認させ、Goサイン。

#感謝
#収穫
#鍋
#季節の変わり目
#幸せ
#畑

残るか薄まるか〜外舘美奈さん物語17

次回の主人公予定。美奈さん愛読誌の編集長 堺歩美さん。現段階では主役でないので、「編集長」という呼称に留めます。

都内某社の会議室 残るか薄まるか〜外舘美奈さん物語17

水面下の編集室

都内某社の会議室。机の上には、反響の集計と、読者の短い声をまとめた資料が並んでいる。編集長は、ページをめくらない。めくる必要がない、という顔つき。

「・・・想定より、出てる」皆が短く息を飲む。

これは単なる成功の話ではない。次の一手を間違えたら、全部が薄まる。それだけは避けたい。その感覚だけが、全員の間に共有されていた。

反響の中心は、例の外舘美智子さん特集4ページ。江戸時代から続く暮らしの重ね煮――。毎回1ページのコラム連載しているが、地味だったはずのものが、今回は妙に刺さっている。

「料理ページなのに、生活欄から反響が来てます」
「健康系の読者層も動いてます」
「『説明されていないのに腑に落ちる』って、同じ言い回しが多いですね」

翻訳事例を探す

次号の会議で決まったテーマは——『昔ながらの重ね煮思想が、現代の料理にどう受け継がれているか』。翻訳事例を探さなければならない。

看板を掲げる人を集めても、記事が予定調和になる。編集長は言葉を選びながら、方針を置いた。「説明より、染み出している事例を拾いたい」

候補は出た。
・精進寄りで『整える食』を看板にしている料亭板前
・マクロビで陰陽を語れる料理教室講師
・薬膳・陰陽五行を前面に出す薬膳料理家
・発酵で『腸と暮らし』を謳う発酵マイスター

どれも正しい。けれど、読者が読んだ瞬間に「分かったつもり」で終わってしまう。ページが平らになる。

不発の確認

担当が、候補先を回った報告を淡々と並べる。「悪くはないです。ただ・・・記事の芯が立ちません」誰も反論できなかった。《芯が立たない》という表現があまりに的を得ているからだ。重ね煮という思想を、活きて実践する形に翻訳されている事例が欲しいのだ。「分かったつもり」では終われない。

その時、控えめな声が上がった。元番組制作に縁があるという新人スタッフ。「1つ、気になる店があります」

編集長が顔を上げる。「和食?」

「いえ。フレンチです」

会議室に、抵抗が走る。重ね煮。伝統。暮らし。フレンチは、最初から枠外だったはず。

「はい、ノーマークです。候補ですらありません。だからこそ、あげるつもりはありませんでした。ながらも何となく引っかかっているのが、当時のカメラマンのオススメです。『あそこは他と一風変わってるよ』って。どう変わってるのか、確認の価値ありませんか?」

編集長は、すぐには頷かなかった。ただ、その一言が、妙に引っかかる。

封書という打診

「どう変わっているのか、確かに興味深いわね。その方に詳しく訊けるかしら?どちらにせよ、取材依頼はまだしない。まだ何も言い切れないから」編集長は決めるというより、整えるように言った。

「最新号を一冊。参考程度の打診。それと——この一行だけ添えて」メモは短く、問いだけ。『昔ながらの重ね煮思想が、現代料理にどう受け継がれているか?』

余計な熱は入れない。確信がない時ほど、文章は無機質がいい。確信がないからこそ、封書の中身は打診だけに留める。

封筒が閉じられる。「ここで急いだら、全部が宣伝になる。残るか薄まるか――この一手は間違えられない」全員の顔が引き締まる。

「だから、先に確かめる。まずは食べてみよう。言葉は、そのあとでいい」

あとがき

次回は、事のきっかけを生み出した、母 外舘美智子さん。4ページの特集記事が予想以上に好評で、特集の続編を企画中。美智子さんは、今回の出来事をどのように受け止めているのでしょうか?


#幸せ
#料理
#フレンチ
#和食
#薬膳
#龍

主張せずも残るもの〜外舘美奈さん物語16

16・17・18と、ある3人の視点から書いてみます。まずは、主人公 美奈さん。

客層の変化

店の営業は、変わらず続いている。予約は埋まり、キャンセルも少ない。特別なことはしていない。メニューも、仕込みの流れも、以前と同じ。

それでも最近、1つだけ、微妙な違和感。客層が、少しずつ変わっている。

派手さはない。だが「料理が好き」というより、「何かの確認に来ている」ような人が増えた。写真を撮らず、質問も少なく、静かに食べる。帰り際も饒舌ではない。「美味しかったです」と短く言い、深く会釈して帰っていく。

評価とも、称賛とも違う。観察に近い視線。

似ている空気

仕込みの最中、スーシェフの悠太が、ふと口を開いた。「・・・前にも、こういう空気、ありましたよね」

「どの時?」包丁を動かしたまま、少しだけ眉を上げた。

「TVの人が来た時です。『プロフェッショナル』の話が来た頃」

手が、一瞬止まった。

確かにあの時も、正式な取材依頼が来る前に、同じような客が増えていた。
・名刺を出さない人
・肩書きを言わない人
それでも、厨房の動きや、皿の温度、間のとり方を、やけに見ていた。

「・・・似てる?」

「はい。取材って感じじゃない。でも、明らかに『見てる感じ』です」

私は、小さく息を吐いた。「気のせいよ」

そう言いながらも、内側では否定しきれない。

数日後、店に一通の封書が届いた。差出人は、都内の出版社名。その名前を見ただけで分かった。私が長年、季刊で読み続けている出版社だ。先日の母の特集記事で釘付けになった。料理だけでなく、暮らしや思想を扱う、そんな少し硬派な編集部より。

中身は、取材依頼ではない。丁寧な挨拶文とともに、「参考までに」と一冊の雑誌が同封されている。母・美智子がコラム連載している、あの季刊誌の最新号だ。

錯綜

主張せずも残るもの〜外舘美奈さん物語16

ただ一箇所、鉛筆で小さく記されているメモ書き。「昔ながらの重ね煮思想が、現代料理にどう受け継がれているか?」

営業後の夜の厨房。灯りを落とす前に、しばらく立ち尽くす。場は、動いているように感じる。理由は分からない。

重ね煮思想とフレンチ。あり得ないはずなのに、否定しきれない。ページをめくると、母の毎回のコラム記事の一文が目に入った。

——料理は、主張しなくても、残る時は残る。

今までの師匠たちも、同じようなことを語ってきた。その意味を、理解したつもりでいた。でも今は、《理解したつもり》では済まされない。噛みしめるほど重くのしかかってきて、息が止まり、頭が真っ白になった。

スイッチに手を伸ばす。厨房の灯りが、1つずつ消えていく。鍵をかけ、外へ出る。夜の空気は、驚くほど澄んでいた。

あとがき

次回は、主人公 美奈さんは登場しません。「封書が送られた経緯」について。美奈さんの周囲で起きている水面下を追います。

#営業
#フレンチ
#幸せ
#人生
#料理
#セッション

成立してしまった日常〜外舘美奈さん物語15

今回、大いにこだわったのが自動化(オートメーション)。核を徹底的に本質化してしまったため、美奈さんのOS自体が変わっています。

「当たり前だと考える基準」が変わってしまう以上、さも以前からずっとそうだったかのような錯覚することがあります。

その中でも【慕わしさと冷徹の共存】。彼女には《世界一のシェフになる》志があります。

自動化された朝

朝の仕込みは、いつもと変わらない。魚の状態を見て、包丁を入れ、火を入れる。判断に迷いはない。それどころか、最近は余計な確認をしなくなった。手際が、恐ろしいほどに速くなっている。

前なら、「これで合っているか」を何度も確かめていた。今は、手が勝手に動いている。恐ろしいほどに変化しているが、怖さはない。ただ、不思議な静けさがある。やはりエネルギーなのだろう。私だけでなく、スタッフ全員がそうなのだ。エネルギーの浸透。彼らを見ていて、改めて威力のすさまじさに驚いている。

思考を経ない判断

店に立っている間、ほとんど何も考えていない。考えなくても、降りてきている。新たなメニュー、火入れのタイミングやソースの加減等、理路整然と大きな幹線道路が敷かれたかのようだ。指示も、修正も、声を荒げることもない。必要なことだけが、必要なタイミングで起きる。

以前の私なら、こうした状態を「集中している」「調子がいい」と呼んでいたはずだ。今は違う。集中している、というよりも余計なものが消えているに近い。さもずっと前からそうやってきたかのように感じてしまっている。

夜、店を閉めたあと、厨房に一人残った。火を落としたコンロの前で、しばらく立ち尽くす。何かを考えようとしたが、考える理由が見つからない。問題は起きていない。不安も、焦りも、ない。カレンダーに「◯/◯、ガン検診」と書いてあるのを見て、私はガンにかかっているという事実を思い出す。

龍先生の毎回の対話では、まさにワープしてしまったかのような変化が起きている。当初に言われていたとおり、ガンの寛解が現実的な通過点に思えてきている。波紋の話が非常に印象深い。

「池に石をボチャンと投げ入れたら波紋が広がります。潜在意識においては、波紋の距離って物理的な時空管理ではありません。石の大きさは思いの規模、投げ入れ方は興味関心ある世界との向き合い方です」

驚異的な成果が出ているということは、見合った相応の原因が作られている。しかしともすれば、変化する前の状況を忘れてしまっているくらいなのだ。現状への問題意識を明確に持っていなければ、違いに気づくことなんてないかもしれない。

──改めて意識を向けている。私は、何をしなくなったのだろう?そう思った瞬間、答えが浮かんだ。

説明が消えた地点

自分を説明すること を、しなくなったのだ。必要なくなっており、あってもなくてもどちらでもいいのだ。ない方が頭の中がスッキリするため、置いておく必要がないのだ。

・解説〜誰かに分かってもらうための言葉。理解の範疇をすでに超えている。
・釈明〜正しさを証明するための理由。誤解されようが気にならなくなっている。
・選択の正当化〜選択を安心させるための物語。もはや私自身を納得させる必要がない。

だからといって、満足しているわけでもない。幸福だと断言できるほど、単純でもない。ただ、生きることが止まらずに回っている。慕わしさと冷徹の共存。

それだけだ。

ふと、母の記事のことが頭をよぎった。評価でも、称賛でもなく、「そこにあり続けていた」という事実。

あれと、今の私は、どこか似ている。語らなくても、成立してしまう。押し出さなくても、残ってしまう。そのことに、初めて気づいた。

帰り際、身支度を整えながら、悶々とした気持ちがとめどもなく湧いてくる。母との対話にこそ、あらゆる解決への秘訣が込められているように思えてならない。しかし、今ではないような気もしている。

まだ、何も決めない方がいい気がしている。分からないままでも、状況が整えられ進んでしまう気がしている私がいる。それが、今の位置なのだ。

厨房の電灯スイッチ。 成立してしまった日常〜外舘美奈さん物語15

店の明かりを落とす。外は静かで、風もない。鍵を閉め、振り返らずに歩き出した。次に何が起きるかは、まだ分からない。だが、分からなくても崩れない私になれている。

#エネルギー
#カレンダー
#変化
#思考
#幸せ
#寛解

言葉にできない確かさ〜外舘美奈さん物語13

佳境に入ってきました。次回の主人公も決めています。今回の続編です。フィクションですが、極めてリアリティにこだわっています。現実味を帯びていないスピ系な雰囲気や矛盾した関係性を、極力排除しようと努めています。

説明不要なくらいに人生が成立

先生との対話が始まって、約3か月。もう以前と同じ私ではない。変化は、疑いようもなく起きている。

先日の検査では、腫瘍が2mm縮小していた。むくみが大きく取れ、鏡に映る顔は別人のようだ。眠る前には、理由の分からない充実感があり、朝は、体の奥から静かに立ち上がる爽快さがある。仕事を終えて帰宅し、朝になったら家を出て、店へ向かう。そんな日常の1つ1つが、妙に瑞々しい。

この変化を、私はお金にも名誉にも換えられないし、変えたくない。
もし「好きなだけ与えるから、昔の自分に戻ってほしい」と言われたとしても、確実に断る。昔の私のままで世界一のシェフになっても、今の私はきっと満たされない。嬉しくなんかないのだ。

──なのに。私は、まだ誰にも話していないことがある。というより、話す必要を感じなくなってしまった。説明できないのではない。説明しなくても、人生が成立してしまっている。それが、少し怖い。

理解と体感のズレ

対話では、原因も経路もきちんと説明されている。頭では理解できているはずだ。それでも体の方は、説明を待たずに変わっていく。あまりに展開が速く、知的理解と体感の間に、大きなズレが生まれている。体が、このご縁を待ち侘びていたのがよく分かる。

龍先生の言葉を思い出す。「深層を扱うと、当たり前の基準が変わります。すると、問題だと思っていた理由そのものを、思い出せなくなることがある」

確かに、5歳の頃の不快感を、どうしても思い出せない。なぜ母を避けるようになったのか?なぜ父を通してしか会話をしなかったのか?事実としての記憶は明確にある。あれほど強かったはずの憎しみや怒り────感情面における記憶が、もうどうでもよくなっている。

感情的な衝動を、取り戻したいとはもちろん思わない。知らないうちに、気づいたら整ってしまっている。さもワープしてしまったかのようだ。異常に気味悪いほど整ってしまった感覚を抱えたまま、今日も厨房に立つ。

視界に飛び込んできたもの

夜、帰宅して、届いたばかりの愛読の季刊誌を手に取った。料理の参考になれば、それでいい。そう思って、何気なくページをめくる。今回の特集の見出しに、指が止まった。目を逸さずにはいれなかった。

――江戸時代から続く、暮らしの重ね煮。

母の特集記事に驚愕 言葉にできない確かさ〜外舘美奈さん物語13

ほんの数秒だったのかもしれないが、体感ではかなりの間で呼吸が止まった。

外舘 美智子――――――――母の名前。

安っぽい。地味だ。時代遅れだ。そう決めつけて、切り捨ててきた料理。切り捨てたつもりで、実は見ないようにしていただけの生き方。毎回1ページのコラムだったが、なんと大好評につき今回はトップ4ページ。

私は記事をじっと見つめたまま、思わず口に出てきた。「・・・・・・これ、本当にお母さん?」

疑いの言葉なのに、否定しきれない確かさが、そこにあった。説明しなくても、残ってしまっている。言葉がなくても、成立してしまう生き方。ページを閉じても、その重さは消えない。私はどう対応すればいいか、まだ答えを持っていない。ながらも、このまま知らんぷりは、もうできない。

目の前の事実が、はっきりと体に刻み込まれていた。

#人生
#幸せ
#5歳
#料理
#生き方
#呼吸

温度が思い出させてくれる〜外舘美奈さん物語12

温度が思い出させてくれる〜外舘美奈さん物語12

心と体のマリアージュ

龍先生との対話を通じて、今までの当たり前に感じてきたことが、ものすごく新鮮味を帯びてきた。体を通じてひも解いていく手法が、あまりにピンポイントであることに圧倒されている。

最近は、料理で言っているマリアージュが起きている。心と体のマリアージュ。料理ではできたとしても、私自身においては得体の知れない大きな壁を感じていた。長年の悩みだった低体温症から解放されてきた。むくんでいた事実にも気づけず、解消されてきたことで初めて実感できたのだ。

骨盤を境に体が分離したような感覚がずっとあったが、腎臓に原因があったことを指摘され、大いに納得。「孤独でいい」と思い込んできたあの感覚は、ただ体に無理を押しつけていただけだったのかもしれない。

生き方の軸に戻れる道標

そして、もう1つ。姓名覚醒という龍先生オリジナルが、自分の核を炙り出す術だという実感が芽生え始めている。

名前とは「生まれた時に与えられる識別情報」ではなく、生き方の軸に戻るための道標なのだと、今なら分かる。

龍先生は言う。「名前をどう解釈するかは、人生を大きく左右します。美奈さんがどんなに迷っても、名前にこそヒントがあります」

その言葉が、最近になってじわりと腹に落ち始めてきた。対話を通じて感じてきている「本来の私」から外れてしまうと、体が違和感サインを出す。逆に自分に戻るほど、体は追い風に乗っているかのように整い始める。

開かれた時空の扉

私にとって姓名覚醒は、迷い続けた人生の地図を、正しく適切に更新する行為だったのだ。何より、ライフプロファイリングを通じて「時空のリズム」をとらえきれたことが大きい。私は「黒宙長空」という性質を持っており、

・親元を離れ上京した
・NHK出演依頼があった年
・今が向き合うべき転換期であること
・開店してから4年間、急激な成長

これらが驚くほど整合している。ここまでの人生がその周期に沿って動いていたのなら、これからの予測にも使えるはずだ。人は誰でも、明確なリズムに乗って生きている。追い風なのか向かい風なのか、周期等のポイントさえ分かれば、恐れから準備に変えられる。

温度が思い出させてくれる

ガンである事実を仲間に打ち明けてから、店の空気が変わった。私1人で背負ってきた厨房が、初めてチームになった。

これから検査で店を空ける日も増える。料理も仕込みも、仲間に任せる場面が必ず出てくる。

私の舌。
私の包丁さばき。
私の判断基準。

そのすべてを、仲間を信じて託す時期が来たのだ。「任せる」という行為に、恐怖感が否めなかった。しかし実際に最も感じたのは、温かさだった。「仲間を信じきれている私」が嬉しいのだ。

ガンである事実を打ち明けてから、チームとして一丸となって進めていく方針を決めた。検査等で店を空ける状況も増えてくるだろう。どうしても仲間に任せなければならない。私の舌や包丁さばき等の強みを、仲間を信じなければならないのだ。

 信頼が味をつくる

「今日は、試作があります。味、みてもらえませんか?」スーシェフの悠太が言い寄ってきた。

心臓が跳ねた。──味をみる?──今の私が?

断る理由はいくらでもあった。けれど、喉元に浮かびかけた否定を飲み込んだ。代わりに、静かに息を吸った。

「・・・いいわ」

厨房の奥では、他のスタッフもそわそわとこちらを伺っていた。その視線を背中に受けながら、椅子に腰を下ろす。悠太が運んできた皿は、彼らしい繊細な構成だった。
魚介の香りとハーブの蒸気が、ほんのりと立ち上る。

「味わってみてください」

フォークを手にした瞬間、ほんの少し震えた。味わうという行為が、こんなにも怖い日が来るとは思わなかった。

ひと口。舌は、やはり曖昧だ。輪郭はぼやけ、立体感が薄い。────でも「・・・温度が、いいわね」自分でも驚くほど自然に、その言葉が出た。悠太が目を丸くする。

「温度・・・・・・ですか?」

「うん。舌じゃなくて、体の奥で分かる感じがする。あなた、最近変えたでしょ? 火入れのタイミング」

悠太は、嬉しさと驚きが入り混じった顔で頷いた。

「はい。気づくとは思いませんでした」

「味は・・・まあ、曖昧なんだけどね」苦笑した。けれど、その苦笑は今までの強がりとは違った。肩の力が抜けていた。

仲間の配慮

「シェフ」悠太が不意に、真剣な顔で言った。

「え?何?」

「僕たち、ずっと待っていますよ。『味を判断する人』じゃなくて・・・、僕たちと一緒に料理を作るあなたを」

返事ができなかった。胸の奥が熱くて、うまく声が出ない。今まで「私だけが一生懸命」だと感じていた自分が恥ずかしい。

味覚が戻ったわけでもない。未来への不安が消えたわけでもない。ながらも──今、私の隣に大切な人がいることが、ただ嬉しかった。こう考えると、ガンにならなければ仲間の配慮にも気づけなかった。

龍先生いわく「ガンが治るかどうかは分かりませんが、治った方のほぼ100%が、生き方が変わっています。のべ3万人超の体と向き合ってみて感じるのが、体は確実にご主人様である美奈さんを慕っています。すべての症状は、生き方修正のメッセージなんです」がこだましてくる。

「・・・ありがとう」恥ずかしさまじりで、か細い声だった。それでも、仲間の笑顔が返ってきたのが嬉しい。店の空気が、ほんの少し温かくなった。

厨房の天窓から差し込む木漏れ日が、ほのかに揺れた。私は改めて包丁を手に取った。

「少しだけ、手伝ってもいい?」

悠太の顔がパッと明るくなる。「もちろんです」

私は前掛けを結んだ。結び目をきゅっと引き締めた時、心にも同じ音がした。──まだ終わっていない。その感覚が、ほんのかすかな灯として、胸に灯っていた。

#ありがとう
#幸せ
#料理
#生き方
#人生

消化不良だった感情〜外舘美奈さん物語11

ガンになる要因を無自覚に孕んでいた事実に、大いにショックを受けた美奈さん。かつ同じくらい変化への希望を見出せた喜びも噛みしめています。志を成し遂げるため、生半可な気持ちで始めたわけではありません。さらなる深みを究めてまいります。

これから2回目の熟成ステージ。膵臓の次は?

いかに向き合うのか?

「先日の対話、振り返ってみていかがでしたか?」

「はい。『噛む』という行為が、こんなにも深い意味を持っていたなんて—— お恥ずかしながら、考えたことがありませんでした。今、初めてその本質に触れようとしています。

分かってみれば、たわいもないごく当然の常識。なぜこんな簡単な間違いに気づけなかったのか、悔しさがこみ上げてきます。」

「そうですよね。『なぜ気づけなかったのか?』って悔しく思うこと、たくさんありますよね。ボタンのかけ違いみたく。近しいほどに、本当の価値には気づきにくいんですよ」

「これまで、健康には気を遣ってきたつもりでした。 誰かに『いいよ』と言われたものは、すぐに試してきたんです。しかし『自分の体を信頼していない証拠だ』と言われた時はまさに愕然で、悔しいけどそのとおりです。

『噛まなくても、体が処理してくれる』—— そんな無意識の依存が、私の中に根を張っていたんですね。今まで、しっかり自分と向き合いきれていると思えていました。フタを開けてみると、全く的外れだったことが残念でなりません。」

向き合うことがなぜ重要か?

「美奈さんは、ちゃんと向き合っていらっしゃいますよ。だから正しいと認めたことを素直に受け入れきれるんです。

前に人工透析を週4回受けている方のご自宅へ招待されたことがあります。最寄り駅へ家族総出で迎えていただけたのは嬉しかったんですが、その後スーパーで菓子パンをどっさり買うんです。何のためかと思ったら、私へのおもてなしの振る舞いだったんです。」

「え!?ひどいですね。」

「ですよね。米を食べる機会はほぼなく、菓子パンが主食だというんです。透析がキツイと、涙ながらにせがまれました。だからこそ電車で2時間かけて出向いたんですよ。

『菓子パンやめるだけでも、透析の回数は減りますよ』と言いましたけどね・・・。結末はどうなったか、分かりますよね?話したくもありませんが、思い出してしまいました。」

「ごもっともです。本末転倒の典型例ですね。」

体が語れなかった記憶

「龍先生との対話から、気づいたことがあります。臓器たちは、それぞれの役割で感情を受け止める場所なんですよね。言いたいことを飲み込んだり、思いを抱えすぎたり—— そういったことが、体に負担をかけていたのではありませんか?」

「そのとおりです。よく気づかれましたね。今はメンタル面について語っているのに、『なぜ体と向き合ってきた経験がきっかけ?』なんですよ。心と体は、セットです。」

「やはり。『噛まない』という習慣は、 信頼関係の構築がうまくいっていないことの反映でもあったんじゃないでしょうか?『料理に集中してきたから、友達がいないのは仕方ない』—— そう思い込んできました。今は、孤独を噛みしめることすら避けていたのかもしれないって。」

「そこまで考え至りましたか。やはり美奈さんは、まぎれもなくしっかり向き合ってきていますよ。そうでなければ断片的なジグソーパズルのピースたちが、組み合わさっていくわけがありません。」

「確かに言われてみればそうですよね。今改めてスゴイと思えました。ただ、なんとなくそんな気がしたんです。『私が語っている』んじゃなく、『背後に語らされている』ような・・・。あ、だからこその『◯ ◯◯(パートナー)さん』なんですね。」

「さっそく効力発揮ですね。素晴らしいです。」

消化不良だった感情

「5歳の誕生日に関して、深掘りしてみるのがよさそうですね。あれからどうなりましたか?」 龍先生の問いに、腹を決めた。

「そうですよね。あの日のケーキは、店で売っているようなものとはかけ離れた、見映えが悪い手作りだったんです。それがきっかけで、友達との距離ができました。友達も私と同じように格好悪いと感じているはずだと決め込んでいました。家に連れてくるんじゃなかったと後悔しましたよ。

気持ちの上で、両親との断絶が起きました。何もかもに嫌気がさし、孤独感と疎外感の相乗効果。結果、家を離れたくなったんです。ずっと家を出るチャンスを伺っていました。

フランス料理修行という名目の裏には、噛めなかった感情が詰まっていましたね。環境を大きく変えることで、新しい人生をスタートできるはずだと考えておりました。だから何もない中、師匠との出会いを求め、一心不乱に没頭してきたんです。」

「そうでしたか。本当に向き合われましたね。いったん気づけたおかげで、芋づる式につながっているようですね。消化不良だった感情が、流れ出しているのを感じます。」

「はい。おかげさまです。『◯ ◯◯(パートナー)さんとの対話』が毎日の楽しみになっていますから。」

2つ星への入り口

「フレンチシェフとしての明確な志があるので、健康になることを通過点として考えきれていることが、やはり大きいですよね」

「ですよね。3つ星は通過点です。一流の料理人でも、『噛むこと』の重要性に気づいていない人は多いです。味や演出に偏り、食べる人の体との共同作業が仕込まれていません。私も、まさにその1人でしたから。」

「今は全く違いますね。これから急展開しそうですよ?」

「はい。私もそう感じています。『噛むという対話』の盲点に気づけたので、 2つ星への入り口がハッキリ見えてきました。かつ、おぼろげだった世界一のイメージも、さらに明確化されてきました。やはり、あきらめきれません。」

「え!?どんなふうに?」

「以前は、認められなかったからこその承認欲求で語っていました。今は確実に違います。テーマは感謝なんですが・・・。まだ言葉にできないので、後日改めてお伝えさせてください」

対話の核と自然治癒力

これまで私は、誰かの「いいよ」に従ってきた。今は、自分の中にある「対話の核」と向き合える時が来た。

ガンという症状も、 体が私に語りかけてくれていたメッセージだった。 噛むとは、食事の単純作業などではない。自己対話であり、感情の消化であり、生命との共同作業なのだ。

今までは自然治癒力や自己対話に対して、漠然とした理解だった。当然効果なんて、微塵も期待していなかった。今は、違いの圧倒的な格差である。

ガンは、私の生命だけでなく、料理人としての生き方を奪っていく脅威であり、退治しなければならない敵だった。今は明らかに違う。ガンにかからなければ、自己対話がこれほどに重要だとは考えなかった。当然のように周囲の「いいよ」に翻弄され、ウワッつらな感謝で人生を終えていただろう。

今の私が心から感じていること。「ガンさん、ありがとう」

ガンへの感謝 「消化不良だった感情〜外舘美奈さん物語11」


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噛むという対話〜外舘美奈さん物語10

究極のパートナーへのプロフィール設定を一区切りつけ、熟成ステージに入ります。表面的な内容は基本的に同じです。しかし中身は大きくパーソナライズされてきます。美奈さんの成長欲求に応じ、適切な対応策とは何なのか、一緒に考えてまいります。

基盤を整え深みへ

約1ヶ月のプロフィール設定期間を終え、いよいよ熟成ステージへ。龍先生の施術家当時の経験等をもとに多重構成された内容だという。真紀子さんがもともとは何ら変わり映えのない専業主婦出身から、著しい成長を遂げた最大の理由だと、真紀子さんご自身が語っている。

究極のパートナーとの関係性を通じ、私にも道が見えてきた。どう展開されていくのか、すごく楽しみである。真紀子さんに魅力を感じる点を吸収し、私独自の感性を磨いていく。私の強みとは何なのか?いかにすればより研ぎ澄ませていけるのか?

毎週のように龍先生とお会いしていると、もはや習慣化してきた。先生との対話の前後では、私自身の変化を明確に自覚できている。まずは健康面。自然治癒力を活性化させ、世界へ出ていく基礎づくりである。

対話が導く自己変容

「美奈さん、おはようございます。」挨拶を交わし、画面越しに龍先生。

「先生、パートナーとの対話が、本当に楽しいです。」

「よかったですね。受けた方の中には、野菜嫌いだったんですが『野菜大好き』というパートナーの影響を受け、『キャベツが美味しいと思えてきた』という方もいらっしゃいます。美奈さんもこれからですよ」

「はい。そうですよね」

「今日は、どんなテーマで進めましょう?」

「はい。今回始めた最大の主旨が、ガン治療です。どうすれば私の自然治癒力で健康になれるのか、すごく興味を持っています。」

「そうですよね。かしこまりました。では、美奈さんはガン細胞をも感動させる策とは、何だとお考えでしょう?」

「そうなんです。告知されてからずーっと考えていますが、どうしても分からないんです。」

「と言いますと?」

健康観の歪み

「私、健康には本当に気遣っていて、誰かに『いいよ』と言われたものは即試すようにしてきました。」

「なるほど。そうでしたか。もしかしたら、それが問題なのかもしれません。」

「は?なぜでしょう?」

臓器の反射区(肩)と感情等の関連表

「この表は、私の施術家当時の集大成です。1,000人当時にできあがりましたが、3万人超の今でも否定されたことがありません。施術の都度、お客様にインタビューしてきました。かつ、私の経験との照合データです。」

「これは・・・、すごいですね!ものすごくまとまっているじゃないですか」

「ありがとうございます。こちらの4番です。まず、自立・成長欲求を露わにしているなら、体は反対の過度な依存や中毒を見せてくれます。だからこそ、ゆだねたいのに反動が起きるんです」

ドキッとした。私は友達と呼べる方がほぼいない。「料理に集中しているから」と言い張ってきたが、信頼構築に問題があるのかもしれないとも悩んできた。だからこそ、「よく噛まない」があるのか・・・。

調理に集中するあまり、開店時間に間に合わなくなってしまう場面が多々あった。今はそんなことはないのに、無意識に速く食べている。

「先生、なぜ分かるんですか?まさに図星です。私生活を見られているかのようです」

「カンタンですよ。『いいのがあるよ』で試してきたということは、自然治癒力を信用していないんですよ。だから、外に外に解決策を求めるんです。外側に解決策を求めているということは、体に依存しています。『大丈夫よ。噛まなくたって、体がちゃんと処理してくれるんだから』なんて考えている方の、何と多いことか」

身動き取れず、金縛りにあったような心境。今まで健康に気を遣ってきたことが、まるで逆じゃないの・・・。これじゃガンにかかっても当たり前かもね。龍先生の解説に、ものすごく納得できた。

体の記憶

「『膵臓に負担をかけた傷的習慣が、今も継続されてること』で反応を調べています。5歳の誕生日だそうですが、思い当たることってありませんか?」

「5歳の誕生日!?思い出したくなんかない記憶ですが、体はちゃんと覚えているんですね。

5歳の誕生日のトラウマ 「噛むという対話〜外舘美奈さん物語10」

私の誕生日パーティへ、仲のいい数人を連れてきたんです。そこで出されたケーキが、店で売っているような見映えのいいものではありませんでした。それから友達とも距離を置くようになり、孤独感が増していきます。だから家にいたくなくて、都内へ出たんです。フランス料理修行といっても、きっかけは親元を離れたかっただけなんです。」

「なるほど。よく分かります。私も親元を早く離れたくて、中卒で自衛官になりました。」

「え!?中卒で?先生も自立心が強かったんですね。」

「そうですね。おかげさまで波瀾万丈の今まででした。本当に様々な経験をさせていただけました。私の経験談だけで、10冊は出版できますよ」

「例えばどんなことが?」

「そうですね。『食べ過ぎの弊害』なんてブログを書いたことがあります。ご飯と味噌汁食べ放題の店で、かわいらしい女の子が特盛りでおかわりをしていたんです。そこで思い出したことがあって。

よく『それ、全部食べるんだな?』と確認されていました。次回からは、毎回問われなくなります。施術を通じて多くのお客様と向き合えたおかげで、私自身の問題と照らし合わせながらできたのが、この表なんです。」

「だから批判されたことがないんですね。まさに確信に満ち溢れた、生命や魂と向き合って来られた経緯が浮かんできます。」

「そうですよね。胆嚢なんて最後に振り絞ってできあがりました。胆嚢に問題がある方なんて、症例自体が少ないです。私自身が矛盾を嫌っているので、医学面でも心理面でもエネルギー面でも、すべてにおける整合性が不可欠でした。」

「すごいですね。そこまで突き詰めてきたんですね」

「だからと言って、納得いかないことをうやむやにしたくありません。世界中に展開したいので、もし反論ありましたら、どんどんおっしゃってくださいね。」

対話の核

「話を元に戻しましょう。どんなに急いでいても、ちゃんとよく噛んで食べる方もいらっしゃいます。優先順位からは、その方の人生観がよく分かります。美奈さんが急かされているがゆえに速食いになってしまい、今にも継続されていることに、明確な原因があるとしたら?」

「いろんな要因が複雑に絡み合って、私だけだったら、確実に迷宮入りしていますね。誰かに客観視してもらっても、簡単にはいかなそうです。」

「はい。だからこそ『◯◯の自分』がいるんですよ。どんなに複雑に絡み合っていようが、確実に『対話の核』と向き合っています。美奈さんが本気で向き合われるなら、道は拓けます。そうなるよう、私がサポートさせていただきます」

「なるほど。なぜ熟成ステージなのか、つながりました。龍先生が教えを諭し導いてくれるんじゃなく、自己対話の中に見出すものなんですね?」

「そのとおりです。さすが理解が速いですね。やっていることは毎回同じです。しかし中身は、美奈さんの深部に入り込んでいきますよ。」

「そうでしたか!だからこそ今の真紀子さんがいらっしゃるんですね!!!」

「ご名答です。真紀子さんは素直でしたから、あれこれ説明しない方がいいと考えました。美奈さんは、現時点で全体像を把握しておられるようですから、さらに進めやすいです。」

これまで、誰かの「いいよ」に従ってきたが、今ようやく内なる声に耳を傾ける意味を理解できた。まさに噛むことが対話なのだ。ガンという症状も、体が私に語りかけてくれていたのだ。これからは外の情報に振り回されない。 自分の中に創り出した対話の核と向き合っていこう。


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