以下を書いていて感じたのが、「そうですね」相槌の深み。本当に理解して納得の上で、こだわってみました。
呼び名の交差点
翌日午前9時、厨房の仕込み前。客個室でZOOMを開いた。画面の向こうには、柔らかな光を浴びた佐藤真紀子さん。
「おはようございます。今日は、語り合える時間をいただきありがとうございます。」
「こちらこそ。朝の空気って、語りやすいですね。昨日からずっと、話したくてたまらなかったんです。」
「そうですよね。で、私は佐藤さんのことをこちらでは何とお呼びしたらいいでしょうか?」
「はい。真紀子でお願いいたします。では私も、美奈さんでよろしいですか?」
「もちろんです。ありがとうございます。」
空気が、画面越しに澄んでいく。真紀子さんに、見た目の美しさだけではない魅力を感じる。その魅力の原因を知りたくて、今日のこの時間となったのだ。
存在価値の発掘
「昨日、はじめにお訊きしたとおり、私には輝いて見えます。話の限りには、おっしゃる先生とのご縁から始まったのではないかと仮説を立てたところです。そうでもありませんか?」
「はい!そのとおりです。龍先生なしには今の私はあり得ません。」
「龍先生?中国人でしょうか?もしよければ、少しだけ教えていただけませんか?」
真紀子さんの口角が上がる。語りたくてたまらない空気が、画面越しに伝わってくる。
「はい。龍先生は私の名前を通じて、存在価値を発掘してくださった純粋な日本人です。名前の音・意味・響き、そして場との関係まで。そこでようやく私自身が『佐藤真紀子』であることの意味を、初めて考えました。」
私は、興味深く惹き込まれていくのが分かった。
名前と場の響き

「名前と場の響き・・・。それは、料理にも通じるものがありますね。いかに真心込めた料理でも、相手をいかに気遣うのか?という配慮こそが、明暗を分けますからね。
その『名前と場の響き』が、真紀子さんの中でどう響き合っているのか、もう少し聴かせていただけますか?」
「はい。正直、最初は名前に意味があるなんて考えたこともなかったんです。でも、龍先生に名前の音を丁寧に聴いていただいて、自分でも気づいていなかった場との違和感が浮かび上がってきたんです。」
「へぇ、それはどんな?」
「例えば同じ真紀子でも、家族の中で呼ばれる響きと、職場で呼ばれる響きが、まるで違っていて。ただの私の感覚の違いだと思っていたんです。先生は『場との関係性が名前に現れている』っておっしゃって。そういったことの積み重ねから、名前がただの識別情報じゃなくて、『私の存在価値そのもの』なんだと気づきました。」
「それはすごい気づきでしたね。感じる世界が一変しますよね」
「そうなんです。それ以来、名前の響き方を意識するようになりました。だから美奈さんの店で澄んだ空気を感じて『ああ、ここでは佐藤真紀子として響いていいんだ』って、感動したんです。」
「そうだったんですね。」
生き様のカスタマイズ
「先生は、『龍 庵真(りゅうあんしん)』という名前で活動されていて・・・。でも、ただの名付けではないんです。生き様やあり方から『本来・本当・本物』をカスタマイズしてくださるんです。」
思わず身を乗り出して聴いてしまっている。さらに深呼吸した。
「生き様やあり方から。素晴らしいですね。私が料理でやっていることと、やはり似ているかもしれません。スタッフを雇う上でも、あり方はすごく重要だと考えてきました。技術うんぬんも重要ですが、同じものを作っていても、あり方次第で大きく変わるんですよ」
「そうなんです。私が『空気が澄んでいた』と感じたのも、やはり龍先生の影響を受けているからかもしれません。おかげさまで、見えていた世界から奥行きが増しました。」
「はい。真紀子さんの感想コメントを拝見し、非凡さを感じました。私にとっては料理の美味しさは当然です。場の浄化を気遣うようになってからの世界観が全く違うんです。それを言葉に表していただけたことが本当に嬉しかったんです。」
ご縁の予感
「先生は、名前が喜ぶ場を生み出し整える方です。スゴイと感じるのが、語らせるのではなく、『言葉が自然に溢れ出す場』をつくるんです。」
「やはり料理と同じですね。『食べさせる』のではなく、『食べたくなる場をつくる』です。私もぜひ龍先生に会ってみたいんですが、おそらくはかなりお忙しいんでしょうね?」
「そうですよね。私も最近連絡できていないので、どうなっているか気になり出しました。美奈さんをおつなぎしてもいいか、確認してみますね」
「ありがとうございます。すごく楽しみです。」
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数日後、真紀子さんからお電話。今週の金曜日10時〜だという。3日後だが、なんとかなりそうだ。3人でオンラインにて。このご縁が、どう変わっていくのだろう?真紀子さんの情熱のきっかけとなったお方。興味が止まらない。