
「ディープマインドセラピー」の直後。言葉が出ない。画面は変わらない。部屋も同じ。何も起きていないはずなのに、さっきまでとは明らかに違う。前のお試しの時とは、質が違う。軽くなった、というより——逃げ場がなくなった。
「・・・ああ」小さく声が漏れる。
「理解した」というより「感じてしまった」に近い。今までぼんやり流れてきたもの。言葉にしようとしても、どこかで逃がしてきたもの。それが、逃げられない形で目の前にある。
「このままでは無理だ」ずっと使ってきた言葉。その中身が、初めてはっきりする。
無理なのは、状況じゃない。環境でもない。能力でもない。私自身のやり方だ。
整えてから話す。正しく伝えようとする。相手に合わせる。波風を立てないようにする。結果、何も出さない。止める。飲み込む。分かっているように見せる。全部つながっていく。
家庭でも、仕事でも、さっきのやり取りでも。同じようにせき止めてきた。だから同じ結果。「・・・これか」逃げていたわけじゃない。確かに、ちゃんとやろうとしていた。その「ちゃんと」が、全部止めていた。気づいた瞬間、軽くなるどころか、重くなる。
これが原因なら、今までの全部がつながり、矛盾や曖昧という靄が晴れた。同時に、「やり方」をいくら変えようとも無意味だと分かった。「あり方」を変えない限り、何をやってもダメだと分かる。ごまかせない。
今までは、「分からない」で止まれた。「仕方ない」で済ませられた。しかしもう違う。分かってしまった以上、同じやり方を続ける理由が絶たれた。
恐怖が湧き出てくる。じゃあ、どうする?整えずに話す?そのまま出す?果たしてそんなことができるのか?今までやってこなかったやり方だ。失敗する。壊れるだろう。壊れたら立て直せない。元に戻れる選択が、もう現実的に見出せない。
画面の向こうで、龍先生は何も急かさない。ただこちらを見ている。その視線の中で、私の状態がそのまま浮き上がる。「どうされますか?」静かに問われる。
分からない、と言いかけて止まる。さっきまでなら、それで終われた。でも今は違う。現状では、確実に私にはどうにもできない。分からないままでも、選ばなければいけない。息を吐く。
「・・・やります」口に出した瞬間、逃げ道が消える。
自立具現化コーリング。美奈さんから名前だけは聞いていた。内容も、正確には分かっていない。それでも、今の流れの延長線上にあることだけは分かる。「このままのやり方ではダメだ」と分かってしまった以上、前に進むしかない。
「理解してからやる」ではない。「納得してからやる」でもない。とはいえ、このままでは終われない。
「お願いします」言い切る。怖さは消えていない。不安もある。それでも、さっきまでとは違う。迷いながら進むのではなく、分からないまま飛び込むしかない。
画面は変わらない。部屋も同じ。それでも、もう同じ場所にはいない。