やり方とあり方のブレ
画面越しに龍先生の姿が映った瞬間、胸が高鳴った。
「ようやくお会いできますこと、心から嬉しく思っております」
龍先生は穏やかな微笑みで応じてくださった。
「こちらこそ。真紀子さんから話を伺って、ずっと気になっておりました」
喉の奥から小さく呼吸を整えるように言葉を絞り出した。
「私は・・・『藤間 美雅』として生きてきた半面、『藤堂 富美子』としての私を、いつしか見失っていたのかもしれません。突っ走ってきたがゆえの弊害を感じるようになり、今生きていくこと自体が苦しいんです」
龍先生は頷いた。
「名前とは、生き方そのものです。富美子さんは、美雅という名をまとうことで、多くの期待に応えてきたんです。その姿もまた、尊いものですよ」
「そうですよね。ありがとうございます。今まではよかったんです。もうそれだけでは・・・、舞台に立てないんです。できるイメージがつかなくなりました」
発した瞬間、空気の変化を感じた。
「役割名(やり方)と存在名(あり方)がブレてきている。そのズレに気づき始めた。そういう状態ですね」
私は、思わず涙をにじませた。
名前=存在価値の核
「はい。ようやく・・・・・気づけました。けれど、どう向き合えばいいのか、分からないんです」
龍先生は、画面越しに深く頷きながら、ゆっくりと語り始めた。
「名前と向き合うとは、改名したり印鑑等にすがることではありません。『名は体を表す』という言葉があるように、存在価値の核でもあります。
本当の意味で生きるために、まずはその名に当時のご両親やご先祖様がどんな意味や願いが込められてきたのか、一緒にひも解いていきましょう。人生は解釈次第です。改めて再定義することで、きっと多くの示唆が得られます。
もともとの私のように、『悪い名前だ』と考えているなら、悪い人生が展開されていきます。だからこそ『姓名承認』を開発し、世の常識としたいんです。すべての方に、心から望む素晴らしい人生を全うしていただきたいから」
背筋が自然と伸びる。今の私に必要なのは、「美雅を捨てる」ことではない。「富美子で生きる」ことでもない。そのどちらも受け入れた上で、調和融合へ導くプロセスこそが、「私を生きる」ということなのだ。ようやく輪郭が見えてきた気がした。
「かしこまりました。ではまずは、何をやっていきましょう?」
「そうですね。では、選択肢として大きく2点。1つ目が『自立具現化コーリング』と称しています。『究極の自己対話と理想の人格形成』と称しており、世に言う『天才』や『神がかかり』な方を輩出するための内容です。
2つ目が『姓名覚醒』です。存在価値の核である名前と、誕生日・血液型・出生順・出生地を交えて使命を明確化いたします。2は、1に含まれますが、富美子さんはどちらをお望みでしょうか?」
姓名覚醒

「詳細を聴いてみないと分かりかねますが、まずピンときたのは『姓名覚醒』ですね」
「かしこまりました。お話の限りには、十分望ましい状態へたどり着けます。『自立具現化コーリング』は、その後の信頼関係がより強まってからでも大丈夫です。いったん気づいてしまったら、もう元の状態へは戻れません。ゆでたまごが生タマゴには戻れないように。
心の準備はできていますか?」
龍先生の言葉に、私は大きく頷いた。名前との向き合い方を身につけ、存在価値を再定義していく。ようやく「選ばされていた生き方」に終わりを告げ、新ステージにおける旅が本当の意味で始まろうとしている。