言葉にできない叫び
龍先生との対話から数日後。対話を通じて体感した思いを、ブログに表現しよう。ブログにログインしキーボード打ち始めた。・・・言葉が出てこない。思いはあるが、「書いても誰も受け止めてくれない恐怖感」「そもそも書きたい気持ちはあれども、言葉にできないもどかしさ」があることに気づいた。
スマートフォンの連絡先をスクロールしながら、ある名前で指を止めた。高橋玲子さん。優花が亡くなった直後、誰よりも静かに寄り添ってくれた。警察署の霊安室前のソファーで、私の震える手をそっと包んでくれた。
県知事当時、私の講演のスピーチライターで、公私ともに関わっていただいていた。娘の自殺の連絡があった際、真っ先に電話していた信頼する女性だ。53歳の彼女と娘の歳が近いこともあり、「玲子ちゃん」と親近感があった。
「今、少しだけ話せますか?」 震える指でメッセージを送ると、即「もちろん」と返信があった。その4文字に、胸の奥からこみ上がる感情。平静を保ちながら、日時と場所を調整した。
長年信用できていた重み
再会した喫茶店で玲子ちゃんと向き合った。彼女の心配そうな眼差しに、堰を切ったように話し始めた。優花が亡くなった後の、糸が切れ何もできずゴミ屋敷化していた日々。後追い自殺を考えたこと。龍先生との出会い。優花が私に伝えてくれたメッセージ。言葉を選びながら、この胸に秘めていた痛みを、初めて他者に打ち明けた。
玲子ちゃんは、何も言わずうなずきながら、ただ聴いてくれた。私の言葉が途切れると、長い沈黙が流れた。私は、自分が何を話したのか、それがどう受け取られたのか、怖くて仕方なかった。
彼女の口から出たのは、想像を遥かに超える言葉だった。話してみて感じたのが、私は彼女個人は知っていても、周囲の関係性までは知らなかった。彼女をスピーチライターとして長年信用できていた重みを、今初めて知った。

「芽衣子さん。まずは、私に話しかけてくださって、ありがとうございます。私から何かを言うと、強要になってしまう気がして、ただただ祈る日々でした。語れないことも、語りたいという気持ちも、どちらも大切です」 そう言って、彼女は朴訥に語り始めた。
「実は私の姉も、夫を事故で亡くした経験があるんです。芽衣子さんは、小さなコミュニティには興味ありませんか?親兄弟や友人等、大切な人を亡くした皆さんが集まるそこは、言葉にできない悲しみを抱え、互いに支え合う場所です。芽衣子さんが話してくれた優花さんのメッセージを、きっと真剣に受け止めてくれますよ」
新しい扉
私の心臓が、大きく、力強く鼓動した。信頼する人を通じたつながりが、想像もしなかった新しい扉を開こうとしていた。その日の夜、高橋さんから一通のメールが届いた。そこにはコミュニティの代表者の連絡先と、彼女からの温かいメッセージが添えられていた。
「芽衣子さんの一歩が、同じように悩み苦しんでいる誰かの希望につながりますように」
私は、優花との再会を果たしたかのように、胸が高鳴るのを感じた。
「優花。私の声は、確かにちゃんと届いたよ。」喜び溢れる気持ちを、グッと握りしめた両手に込めた。