残るか薄まるか〜外舘美奈さん物語17

次回の主人公予定。美奈さん愛読誌の編集長 堺歩美さん。現段階では主役でないので、「編集長」という呼称に留めます。

都内某社の会議室 残るか薄まるか〜外舘美奈さん物語17

水面下の編集室

都内某社の会議室。机の上には、反響の集計と、読者の短い声をまとめた資料が並んでいる。編集長は、ページをめくらない。めくる必要がない、という顔つき。

「・・・想定より、出てる」皆が短く息を飲む。

これは単なる成功の話ではない。次の一手を間違えたら、全部が薄まる。それだけは避けたい。その感覚だけが、全員の間に共有されていた。

反響の中心は、例の外舘美智子さん特集4ページ。江戸時代から続く暮らしの重ね煮――。毎回1ページのコラム連載しているが、地味だったはずのものが、今回は妙に刺さっている。

「料理ページなのに、生活欄から反響が来てます」
「健康系の読者層も動いてます」
「『説明されていないのに腑に落ちる』って、同じ言い回しが多いですね」

翻訳事例を探す

次号の会議で決まったテーマは——『昔ながらの重ね煮思想が、現代の料理にどう受け継がれているか』。翻訳事例を探さなければならない。

看板を掲げる人を集めても、記事が予定調和になる。編集長は言葉を選びながら、方針を置いた。「説明より、染み出している事例を拾いたい」

候補は出た。
・精進寄りで『整える食』を看板にしている料亭板前
・マクロビで陰陽を語れる料理教室講師
・薬膳・陰陽五行を前面に出す薬膳料理家
・発酵で『腸と暮らし』を謳う発酵マイスター

どれも正しい。けれど、読者が読んだ瞬間に「分かったつもり」で終わってしまう。ページが平らになる。

不発の確認

担当が、候補先を回った報告を淡々と並べる。「悪くはないです。ただ・・・記事の芯が立ちません」誰も反論できなかった。《芯が立たない》という表現があまりに的を得ているからだ。重ね煮という思想を、活きて実践する形に翻訳されている事例が欲しいのだ。「分かったつもり」では終われない。

その時、控えめな声が上がった。元番組制作に縁があるという新人スタッフ。「1つ、気になる店があります」

編集長が顔を上げる。「和食?」

「いえ。フレンチです」

会議室に、抵抗が走る。重ね煮。伝統。暮らし。フレンチは、最初から枠外だったはず。

「はい、ノーマークです。候補ですらありません。だからこそ、あげるつもりはありませんでした。ながらも何となく引っかかっているのが、当時のカメラマンのオススメです。『あそこは他と一風変わってるよ』って。どう変わってるのか、確認の価値ありませんか?」

編集長は、すぐには頷かなかった。ただ、その一言が、妙に引っかかる。

封書という打診

「どう変わっているのか、確かに興味深いわね。その方に詳しく訊けるかしら?どちらにせよ、取材依頼はまだしない。まだ何も言い切れないから」編集長は決めるというより、整えるように言った。

「最新号を一冊。参考程度の打診。それと——この一行だけ添えて」メモは短く、問いだけ。『昔ながらの重ね煮思想が、現代料理にどう受け継がれているか?』

余計な熱は入れない。確信がない時ほど、文章は無機質がいい。確信がないからこそ、封書の中身は打診だけに留める。

封筒が閉じられる。「ここで急いだら、全部が宣伝になる。残るか薄まるか――この一手は間違えられない」全員の顔が引き締まる。

「だから、先に確かめる。まずは食べてみよう。言葉は、そのあとでいい」

あとがき

次回は、事のきっかけを生み出した、母 外舘美智子さん。4ページの特集記事が予想以上に好評で、特集の続編を企画中。美智子さんは、今回の出来事をどのように受け止めているのでしょうか?


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#龍

投稿者:

RyuAnshin

Universal Flow Therapy 健創庵 龍 庵真(りゅうあんしん)と申します。
 少なくも20万人超の名前と向き合わさせていただいた経緯から、Google検索より速く解説できます。 統命思想というオリジナル事業を立ち上げ、天命に生きる方を輩出するために今を生きています。 絶対に目標達成したい方へ、未知の可能性を実感の自立具現化サポート。 
 
 15才で自衛官となり、出身地の長崎よりも首都圏での生活が2/3となりました。 
 私自身のセルフイメージが強烈に低く、どんなに素晴らしいことをしても、悪い意味でバランスをとるような出来事が起きていました。 マジメに生きようともがきつつも、運命の荒波に翻弄され続けた期間は、30年を超えます。 
 今まで一貫してお伝えしてきたのは、 本当の癒しは、ご自身にしかできません。 
 「自立具現化コーチング」という独自の理論により、 ・過去と未来を今ココに集約させ ・究極のパートナーからアドバイスを受ける ・本当に望んでいる思いを発信源に、過去の記憶を癒す 方法を編み出しました。 
 どうぞよろしくお願いいたします。

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