止めてきた声〜堺歩美さん物語11

止めてきた声

言葉が出て、空気が止まっている感覚。整えられていないまま出た言葉が残っている。直美は何も言わずにこちらを見ている。逃げられない。何か続けなければいけないと分かっているのに、どう続ければいいのか分からない。そのまま沈黙が続く。

「・・・じゃあ、どうするの?」

直美の一言で、また止まる。どうする?考えても何も出てこない。今までのやり方では無理だと分かっているのに、別のやり方が浮かばない。

「分からない」

「やっと本音」直美がボソッと一言。

「じゃあ、そのままにしないで」強くはないが、逃げ場がふさがれた。

何も言えない。言葉を探す。整えようとする。・・・できない。どれくらい経ったろう?沈黙が続く。直美が視線を外す。

「もういい」席を立ち、足音が遠ざかる。

直美が席を立った後、すべての音が消える。さっきまでの会話が、そのまま残っている。何も進んでいないのに、修復しようがない、戻れない感覚。

ズレ

キッチンに立ったまま動けない。コーヒーは冷めている。時間だけが進んでいく。このまま会社に行けば、何もなかったことにできる。いつも通りに戻せる。できるはずなのに、動けない。

さっき出た言葉が、さらに重くのしかかっていく。「分からない」「避けてきた」整えられなかった言葉が、浮き彫りに、鮮明に。今までなら、ここで整えていた。理由をつけて、形にして、納得させていた。今回はできない。

そのまま、立ち尽くす。

ハッと我に返り、時間に押されるように動き出す。いつも余裕をもって出かけていたが、今日は際どい。とにかく身支度をして、家を出る。外の空気はいつもと変わらない。人も同じように動いている。それでも、私だけがズレている。

歩きながら、さっきの会話が何度もよみがえる。直美の言葉と、自分の言葉。噛み合っていなかったことが、はっきりしている。だからと言って、どうすればいいのか分からない。

このままでは無理だという感覚だけが残る。駅に向かう足が、異様に重い。

上を向く

改札が見える。人の流れに乗る。いつもと同じ動きのはずなのに、どこかで噛み合っていない。流れに入れない。無理に合わせる。

ふと、昨夜のインタビューで受けた感覚の記憶がよぎる。美奈さんの声。無理がない。押していない。それでも届く。さっきの私の声が重なる。止めて、整えて、結局出さない。明らかに違う。

足が止まる。後ろから人が流れてくる。軽く肩がぶつかる。「すみません」と反射的に言う。その声すら、どこか外側で出ている感覚。

まただ。止めている。その瞬間、はっきりする。家庭でも、仕事でも、今も、ずっと。全部同じ動き。整えて、止めて、出さない。その繰り返し。分かったところで、どうすればいいのかは分からない。でも、このままでは無理だという感覚だけは、さっきよりも強くなる。

改札の前で、完全に止まる。通れるのに、通らない。通れない。なぜ?何がどう違うの?さっぱり分からない・・・・・・・・。涙が込み上げてきた。上を向く。

止めてきた声〜堺歩美さん物語11

会社へ体不調で遅刻する連絡を済ませ、約1時間遅れで到着。今日は仕事になりそうもないが、昨日のメモに目を通す。

「りゅうあんしん」走り書きの雑な字が、突如目に飛び込んできた。なぜかは分からない。何をする人かも、よく分からない。それでも、消えない。美奈さんの声につながっているという事実だけが残っている。

投稿者:

RyuAnshin

Universal Flow Therapy 健創庵 龍 庵真(りゅうあんしん)と申します。
 少なくも20万人超の名前と向き合わさせていただいた経緯から、Google検索より速く解説できます。 統命思想というオリジナル事業を立ち上げ、天命に生きる方を輩出するために今を生きています。 絶対に目標達成したい方へ、未知の可能性を実感の自立具現化サポート。 
 
 15才で自衛官となり、出身地の長崎よりも首都圏での生活が2/3となりました。 
 私自身のセルフイメージが強烈に低く、どんなに素晴らしいことをしても、悪い意味でバランスをとるような出来事が起きていました。 マジメに生きようともがきつつも、運命の荒波に翻弄され続けた期間は、30年を超えます。 
 今まで一貫してお伝えしてきたのは、 本当の癒しは、ご自身にしかできません。 
 「自立具現化コーチング」という独自の理論により、 ・過去と未来を今ココに集約させ ・究極のパートナーからアドバイスを受ける ・本当に望んでいる思いを発信源に、過去の記憶を癒す 方法を編み出しました。 
 どうぞよろしくお願いいたします。

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