正しいかどうか〜堺歩美さん物語2

触れない朝

警察署から帰宅した翌朝、次女 直美はいつも通りに起きてきた。平坦な声で「おはよう」

トーストを焼きながら返した。「おはよう。大学は?」

「行く」

・・・・・・。昨夜のことには触れない。触れても触れなくても、日常は変わらない。触れたところで、何のメリットがあるというのか?コーヒーを注ぎながら、考え振り返る。

謝罪は済んだ。弁償も済んだ。大学側への連絡も確認した。警察からの注意も受けた。今後同じことが起きないよう話もした。やるべきことは、すべて終わっている。何が足りないというのか。

無言の朝食後に

無言の朝食後、直美が机をバンと叩き席を立ちかけ、ふいに言った。「ねえ」

私は顔を向ける。

「ママってさ、本当に絶対に怒らないよね」

昨夜と同じ言葉。昨日言ったことを覚えていないのか?

「怒る場面じゃなかったから。しかも怒ったって何もいいことないじゃない」と返した。

直美は片側だけ口角を上げ、コーヒーカップの縁を指でなぞりながら、笑った。「そういうことじゃない」

正しいかどうか

その一言が、重々しく空気を変えた。長い沈黙が続く。

正しいかどうか〜堺歩美さん物語2

指を机でトントン鳴らしたり、体を震わせながら「ママって、いつも正しいよね」

うなずきかけて、止まる。正しいかどうかは分からない。ながらも、間違えないよう心がけてきた。

直美は続けた。「私が何考えてるか、訊こうとしないよね」。

言葉がすぐに出て来ない。聴く必要があるなら、訊く。今まで「訊いて欲しい」と言われたことがなかった。とはいえ何をどう訊けばいいのか、分からない。直美は、何を訊いて欲しいのか?

直美はそれ以上何も言わず、玄関を出た。ドアが閉まる音が、やけに大きかった。

助ける側の記憶

昼休み、札幌の母 麻由美に電話をかけた。昨日から今朝のことを話す。母は聴いてから―――

「あなたは昔から冷静だったものね」

悪い意味ではないと思う。

「歩美が慌てるところ、見たことないわ。」

私は笑った。「慌てても、仕方ないし」

母は少し黙った後、ポツリとこぼした。「お父さんが亡くなった時も、あなたは泣かなかったものね。」

あの時は、そうするしかなかった。「歩美はしっかりしてるね」父の言葉からも、私の強みだと受け止めている。

「助かったわ。あなたがいてくれて。」

母の声は、感謝だった。ながらもその言葉に、なんとなく些細な違和感が混じる。

《助かった》のか。私は、「助ける側」だったのか。

「分からない」

電話を切った後、机の上の原稿に目を落とす。文字は整っている。構成も問題ない。しかし朝の直美が言った言葉が、脳裏をよぎる。うまく切り換えきれない。

「私が何考えてるか、訊こうとしないよね。」

私は、聴こうとしていないのだろうか?それとも、どう訊けばいいのか、分からないのか?訊いたところで、何がどうなるのか?初めて思う。

今――、何を感じているのだろう?答えが出ない。理由も分からない。「分からない」ということがあるのだと、初めて知った。

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投稿者:

RyuAnshin

Universal Flow Therapy 健創庵 龍 庵真(りゅうあんしん)と申します。
 少なくも20万人超の名前と向き合わさせていただいた経緯から、Google検索より速く解説できます。 統命思想というオリジナル事業を立ち上げ、天命に生きる方を輩出するために今を生きています。 絶対に目標達成したい方へ、未知の可能性を実感の自立具現化サポート。 
 
 15才で自衛官となり、出身地の長崎よりも首都圏での生活が2/3となりました。 
 私自身のセルフイメージが強烈に低く、どんなに素晴らしいことをしても、悪い意味でバランスをとるような出来事が起きていました。 マジメに生きようともがきつつも、運命の荒波に翻弄され続けた期間は、30年を超えます。 
 今まで一貫してお伝えしてきたのは、 本当の癒しは、ご自身にしかできません。 
 「自立具現化コーチング」という独自の理論により、 ・過去と未来を今ココに集約させ ・究極のパートナーからアドバイスを受ける ・本当に望んでいる思いを発信源に、過去の記憶を癒す 方法を編み出しました。 
 どうぞよろしくお願いいたします。

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