間。〜堺歩美さん物語3

間。〜堺歩美さん物語3

長女 育美から

15時。原稿の赤入れを終えてコーヒーブレイク中、スマートフォンが震えた。画面に表示された名前を見て、思わず手が止まる。長女 育美から。

珍しい。通話をタップ。

「もしもし」

「ママ?」

外にいるらしい。風の音が混じっている。

「どうしたの?今、どこにいるの?横浜?」

育美はすぐに答えない。わずかな間を置いて返す。

「さっき、おばあちゃんから電話あった」

母だ。札幌から。

間。

「直美のこと、心配してた」コーヒーカップを机に置く。

「もうやるべきことは全部終わったよ。弁償もしたし、警察も店の人も初めてだろうって」

事実。電話の向こうで、育美がかすかに「うん」と言った。

「それ、直美にも言った?」

「言ったよ」

「そっか」

少し沈黙が流れる。育美が続ける。「あとね」

「うん?」

「昨日、直美からLINE来た」

なぜだろう?息がつまる。呼吸が2拍ほど止まる。

「なんて?」

育美は息を吸ってから言った。

「一言だけ」

間。育美にも言いにくいことがあるのだろうか?

「ママらしい」

「ママって、怒らないよね」

は?拍子抜け。間を空けて言うような重要なこと?育美には言いにくいことなの?なぜ直美は私にも言ったことを重ねて育美にも?

電話の向こうで、風が強くなる。

「それだけ?」

「うん」

また沈黙。育美の苦笑う気配。

「なんかさ」

「なに?」

「直美、怒られると思ってたっぽい」

・・・・・・・・。育美が続ける。

「でもママ、怒らないじゃん」

その言い方に、なんとなく引っかかる。

「怒る必要ある?弁償したし、初めてだし。怒ったって何も解決しない」

育美の渇いた笑い。「ママらしい」

その言葉が、心に雪が降り積もるように落ちた。

編集企画会議

17時。予定されていた会議。外舘美智子さんの特集記事の件。

「料理ページなのに、生活欄から反響が来てます」
「健康系の読者層も動いてます。創刊以来のダントツレビューです」
「『説明されていないのに腑に落ちる』って、同じ言い回しが多いですね」

想定外の反響に、どう特集をつなげていけばいいのか?ひとまずは、美智子さんに相性がよさそうな候補をあげてみることに落ち着いた。

直美との件は、今は切り離した方がいい。集中しよう。

投稿者:

RyuAnshin

Universal Flow Therapy 健創庵 龍 庵真(りゅうあんしん)と申します。
 少なくも20万人超の名前と向き合わさせていただいた経緯から、Google検索より速く解説できます。 統命思想というオリジナル事業を立ち上げ、天命に生きる方を輩出するために今を生きています。 絶対に目標達成したい方へ、未知の可能性を実感の自立具現化サポート。 
 
 15才で自衛官となり、出身地の長崎よりも首都圏での生活が2/3となりました。 
 私自身のセルフイメージが強烈に低く、どんなに素晴らしいことをしても、悪い意味でバランスをとるような出来事が起きていました。 マジメに生きようともがきつつも、運命の荒波に翻弄され続けた期間は、30年を超えます。 
 今まで一貫してお伝えしてきたのは、 本当の癒しは、ご自身にしかできません。 
 「自立具現化コーチング」という独自の理論により、 ・過去と未来を今ココに集約させ ・究極のパートナーからアドバイスを受ける ・本当に望んでいる思いを発信源に、過去の記憶を癒す 方法を編み出しました。 
 どうぞよろしくお願いいたします。

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