定休日のまかない〜堺歩美さん物語6

以降、1日のインタビューですが、3回(現状の予定)に分割します。歩美さんにおいて、大いに重要な転換点となります。

静かな店

店の前に立つと、営業日の賑わいとは違う静けさがあった。「定休日」の表示がなされ、看板の灯りも落ちている。それでも、厨房の奥から柔らかな灯りが漏れていた。

扉を開けると、スタッフに導かれ、オーナーシェフ 美奈さんがいた。客席は片付いていて、普段より広く感じる。厨房の空気だけが生きているようだった。私はカウンター越しに、厨房に立つ美奈さんへインタビューさせていただくことになった。

定休日のまかない〜堺歩美さん物語6

「いらっしゃい。今日は営業じゃないから、気楽にどうぞ」

「はい。ありがとうございます」

「今日はお伝えしていた通り、まかないです」

「はい。楽しみにしておりました」

美奈さんは微笑みながら、鍋に火を入れた。手際は静かで無駄がない。包丁の音も控えめで、どこか落ち着いたリズムがある。

語られる歩み

料理が出来上がるまでの時間、2人はぽつりぽつりと話し始めた。

最初は店のこと。次に料理のこと。やがて話題は、自然と美奈さんのこれまでの歩みに移っていった。母のこと。店の歴史のこと。志のこと。

料理の道を継ぐことが、最初から決まっていたわけではなかったこと。むしろ距離を置こうとしていた時期もあったこと。

「継ぐって、言葉にすると簡単ですけどね」

美奈さんは鍋を混ぜながら、朴訥に言った。

「本当は、ずっと葛藤していました」

母の背中。
守ってきた味。
店という場所の重さ。

それらを受け取ることが、どれだけ簡単ではなかったか。話を聞いているうちに、少しずつイメージができ上がってきた。

やがて料理ができ上がり、カウンターに皿が並び、スタッフが食卓の準備をしてくれる。美奈さんとスーシェフだと言う方と、私のAD。4人で食卓を囲む。

見た目は素朴だが、ほのかな心地よい香り。ナイフとフォークを取り、一口運ぶ。派手さはないながら、どこか奥行きがある。

話はそのまま続いた。

店を続ける中での壁。
料理人としての迷い。
母との距離。

私はメモを取りながら、時折顔を上げて美奈さんを見た。その時。ふと、違和感に気づく。いや、違和感というより──妙に心に残る感覚。声だ。柔らかい。落ち着いている。けれど、ただ穏やかなだけではない。どこか芯がある。静かなのに、不思議と耳に残る。

首をかしげてしまう。(・・・なんだろう)今まで取材で会ってきた人たちとは、どこか違う。説明しにくいが、確かに感じるものがある。何かを乗り越えてきた人の声。気づくと、言葉が口から出ていた。

「美奈さんの声って・・・」

美奈が顔を上げる。「はい?」

「なんというか・・・」少し言葉を探した。

「落ち着きとともに、すごく芯がありますよね」

美奈さんは少し照れくさそうに笑った。「そうですか?」

「ええ。今まで会った人と、ちょっと違う感じがして」

一言

私自身も、うまく説明できない。ただ、ふと疑問が浮かぶ。何があったら、こんな声になるんだろう?料理の話。人生の話。それだけでは、まだ足りない気がする。もう少し踏み込んでみることにした。

「これまでの経験が、声に出ているんですかね?」

そう言うと、美奈さんは少しだけ考えるように視線を落とした。

そして、静かに言った。

「もしかしたら・・・、あるかもしれません」

少し間が空く。

「実は、私・・・」

その言葉の続きが、私のこれからの探求を、大きく変えていくことになる。

投稿者:

RyuAnshin

Universal Flow Therapy 健創庵 龍 庵真(りゅうあんしん)と申します。
 少なくも20万人超の名前と向き合わさせていただいた経緯から、Google検索より速く解説できます。 統命思想というオリジナル事業を立ち上げ、天命に生きる方を輩出するために今を生きています。 絶対に目標達成したい方へ、未知の可能性を実感の自立具現化サポート。 
 
 15才で自衛官となり、出身地の長崎よりも首都圏での生活が2/3となりました。 
 私自身のセルフイメージが強烈に低く、どんなに素晴らしいことをしても、悪い意味でバランスをとるような出来事が起きていました。 マジメに生きようともがきつつも、運命の荒波に翻弄され続けた期間は、30年を超えます。 
 今まで一貫してお伝えしてきたのは、 本当の癒しは、ご自身にしかできません。 
 「自立具現化コーチング」という独自の理論により、 ・過去と未来を今ココに集約させ ・究極のパートナーからアドバイスを受ける ・本当に望んでいる思いを発信源に、過去の記憶を癒す 方法を編み出しました。 
 どうぞよろしくお願いいたします。

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